東北地方太平洋沖地震関連
「三陸の海は今」 山川紘(東京海洋大学産学・地域連携推進機構客員教授)
被災地のアワビの口開けをどうするか?三陸や福島の漁業者の皆様は、その判断に苦慮されていることでしょう。水産経済新聞(2011年8月29日号)にお示ししたように、口開けをどうするか?と学者に聞けば「2,3年禁漁にしてはどうか」と答えるのに決まっています。
一つの理由には、小規模調査では実態が不明で、口開けの判断基準が無いことです。
二つには、アワビ産業の流通の情報をいれていない優等生の回答だからです。
山川は、アワビの口開けに賛成です。但し条件があります。
仲買や流通業者とも相談して、「今年は、水揚げ量は例年より少ないこと、できるだけ大型貝を出荷すること、漁獲をやってみて2回目からは、資源が薄くなる場合には口止めをすることがある。」などの理解を得なければなりません。
実施には、以下のことが必要です。
- 各浜の資源の具合を各漁場ごとに調べること。早朝に、箱メガネによる観察と確認(口開け前に、例年より場所を増やして、丁寧に資源量を調査する。)
- 従来のカギ採りのよる採った者が勝ちという自由競争をやめること (漁業者を選び、潜水器などで協業的に漁獲し、水揚げ分を分けること。)
- とりあえず1回目の口開けを行い、アワビ資源の豊かさに応じて口開けを続けるかどうかを決める、などの注意が必要です。
今年のアワビ入札価格はかなり高値が予測できます。世界の干鮑の集中する香港市場では、超ブランド扱いであった三陸物が、今年からしばらくは市場に出ないのではないかという懸念があるからです。例えば、暖海域のアワビでは、千葉県で大型のクロアワビが18,000円/kgもする価格が8月下旬に見られました。
しかし、多くを漁獲したい事情はわかりますが、アワビの稚貝を多く作るためには、今あるアワビ資源を大切にすることが第一です。
皆さんの沿岸では海底までの透明度が復活したでしょうか?
南三陸町では、透明度は8月上旬で1.5mほどしかありませんでした。これは、陸域の流入物や内湾海底のヘドロから生じたものでしょう。浅海域の問題として心配していることは、濁りを含めた泥の堆積の問題です。この秋に、アワビの餌である大型海藻のアラメが成熟しますが、岩礁に泥が積ってしまうと、遊走子(大型の葉体になるもとの形)が岩盤に付くことができません。また、この9-10月のアワビの産卵期に、プランクトン時代をすごす幼生が、泥の多い海底に着底してしまうと飼料がなく生き残れません。
しかし、これらのことを悪い方にばかり考えても仕方がありませんので、各漁場の問題に合わせて、技術やアイデアを集め、即刻に実践し、克服していくしかありません。
<参考>
- 第一回南三陸町調査(2011/05) http://suisankaiyo.com/pf1/pg/file/read/2724/2011051213
- 第二回南三陸町調査(2011/07) http://suisankaiyo.com/pf1/pg/file/read/2827/2011070507
一方、先日は気仙沼のカキ養殖場の現状について、調査に行ってきました。日本財団からの基金(調査一回分ですが・・・・)が得られましたので、本格的に「水中の流出オイル成分の状態が、将来のカキ養殖の再開にどのように影響するか」を見るためです。
気仙沼湾には、1000klクラスのオイルタンクがまだ4機海中から見つかっていません。
それに積年の生活排水や養殖事業によるヘドロが舞い上がった中に、流出オイルが結びついて、海底にはかなりのオイルが堆積していると考えたからです。
結果はかなり厳しいものでした。海底から採泥すると、オイルが皮膜となって出てきました。
恐らくA重油が表面のものは流出したり、蒸発しているはすで、陸上ではオイル臭が無くなっていましたが、海底には浅海部に車両や重機類が沈んでいるのが目視で判ります。主なところは調べたといっていますが、5m以浅部分や、漁港でも養殖漁場でもないところは船舶や車両が手付かずでしょう。
海底の表面は分解していくと思いますが、泥の中のものは泥を除くか、砂を暑く敷き詰めるか、攪拌して泥に酸素を入れて分解を進める方法しかありませんが、膨大な費用が伴います。
このままでは、この秋のワカメの種の垂下を行なえても、ワカメ表面の油の処理は困難でしょう。今回の仕事で、これからの5年ほどの間、漁業が再開できるかの基礎情報を提供することができます。少なくとも半年後には結果を出しますので、誰かが引き継いで下さい。
調査項目は、21地点の泥中のオイル成分の状態、岸壁浅海域の4箇所の天然マガキのオイル成分、表面海水中のオイル成分などです。ご関心ある方は長期にデータを公表するつもりで取り掛かってください。
現状では、マガキ養殖やワカメ養殖に水質条件を十分に検討することが必要となります。
●アワビ漁業再開のご相談は、FAX:03-5463-0894 山川まで