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2017.01.06 16:31

【1月26日(木)開催】 第112回『水産について考える会』のご案内

『変容する捕鯨論争』

~鯨類資源管理からカリスマ動物コンセプトへ~

講演者:森下 丈二(東京海洋大学教授・国際捕鯨委員会日本政府代表)

 【日時】平成29年1月26日(木) 18時より19時30分
    (終了後懇親会開催:1500円会費制)

【会場】東京海洋大学 品川キャンパス 白鷹館1階講義室(変更になりました)
             (懇親会場:楽水会館1階 鈴木善幸ホール)
 ※都合により学内会場が変更になる場合もございます。こちらのホームページをご覧いただき、お越しくだ   さい。
【講演要旨】 
 捕鯨をめぐる国際的論争の開始点の一つは、1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が採択した商業捕鯨モラトリアムである。商業捕鯨モラトリアムが提案された理由としては、当時IWCが採用していた鯨類資源管理方式である新管理方式(NMP)の運用において、科学的情報に不確実性が存在することから、捕鯨活動を一時停止し、科学的知見の蓄積と包括的な資源評価を図るというものであった。すなわち、科学的な論点であり、日本の鯨類調査はこれに応えることを目的としてきた。

しかし、モラトリアムによって商業捕鯨が停止されたという事実が独り歩きし、やがてこの議論は「商業性」や産業規模の捕鯨活動への反発、反対という形に変容していった。IWCでの沿岸小型捕鯨地域(網走、鮎川、和田、太地)に対する捕獲枠の提案において、日本が商業性の排除や先住民生存捕鯨との共通性の主張を展開したのは、これに対する対応である。この、商業性や産業規模の活動に関する反発は漁業に関する国際的議論の場でも明らかとなって来ており、今や捕鯨に限定された問題ではない。

 さらに、クジラは特別な動物であり、いかなる条件の下でも(科学的に持続可能な捕獲が実現できても、「商業性」が排除されようと、捕鯨が伝統文化であろうと)捕鯨には反対するとの立場が、反捕鯨団体のみならずIWC加盟国政府からも表明される事態に至っている。いわゆるカリスマ動物のコンセプトである。CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議などにおいても同様の主張が行われるようになってきた。

 本講演では、上記の捕鯨論争の変容を論じるとともに、今後の展開について考察する。

■森下 丈二 経歴 

東京海洋大学 学術研究院 海洋政策文化学部門 教授

1957年大阪府生まれ。京都大学農学部水産学科卒業。米国ハーバード大学大学院卒業(公共政策学修士)。農学博士(京都大学)。1982年に農林水産省入省。国連環境開発会議(地球サミット)、ワシントン条約会議など、海洋生物資源の保存管理の観点から一連の環境問題について担当。1993年より在米国日本大使館一等書記官。捕鯨問題、大西洋マグロ保存国際委員会を中心に日米漁業交渉を担当。帰国後水産庁に復帰し、1996年より国際課にてミナミマグロ問題などを担当。1999年より水産庁遠洋課捕鯨班長として、国際捕鯨委員会(IWC)の日本代表団の一員として活躍。2008年より水産庁参事官。2013年より水産総合研究センター国際水産資源研究所所長を経て2016年4月より東京海洋大学教授。

著書・論文には、「Whaling in the Antarctic – Significance and Implications of the ICJ Judgement」共著、BRILL NIJHOFF, 238 -267 (2015)、The truth about the commercial whaling moratorium 単著、Senri Ethnological Studies, 83, 337-353 (2013)、「捕鯨の文化人類学」共著、成山堂書店, 283-301 (2012)、「水産の21世紀-海から拓く食料自給」共著、京都大学学術出版会, 51-76 (2010)、What is the ecosystem approach for fisheries management? 単著、Marine Policy, 32, 19-26 (2008)、 Multiple analysis of the whaling issue: Understanding the dispute by a matrix 単著、Marine Policy, 30, 802-808 (2006)、「なぜクジラは座礁するのか?  「反捕鯨」の悲劇」単著、河出書房新社, 238p (2002)など。

現在、北太平洋漁業委員会(NPFC)科学委員会議長、国際捕鯨委員会(IWC)議長を務める。

参加ご希望の方は(一社)楽水会までご連絡くださいますようお願い致します。
楽水会事務局 rakusui@kaiyodai.ac.jp

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