新年のご挨拶2016
○新年のご挨拶(楽水№853より)
東京海洋大学長 竹内俊郎(21製大)
-楽水会会員の皆様方へ-
会員の皆様、明けましておめでとうございます。平成28年新春に際し、一言ご挨拶申し上げます。
昨年は節目となる出来事がたくさんありました。学外では、戦後70年、国連設立70年、日韓国交正常化50年、東西ドイツ統一25年、神戸震災20年、海の日祝日20年、かまぼこ900年など、学内では明治丸の修復工事完了、水産資料館の改修、海洋工学部(三菱商船学校)設立140年など。今年はこれらの新たな一歩となります。また、忘れてはならないのが、今年は東日本大震災並びに福島第一原発事故から5年目にあたることです。あらためて、犠牲者の皆様方のご冥福をお祈り申し上げますとともに、復興をさらに前進すべく国民全員で後押ししなければなりません。
東京海洋大学は国立大学法人となってから、本年の4月で丸12年が経過します。月日が早いことを実感する今日この頃ですが、法人化後の大学運営は厳しさを増すばかりです。これまで毎年1%ずつ国からの運営費交付金の削減により、設立当初に比較してすでに5億円を上回る金額が削減されてしまいました。このような事態の中で、本学としては大学改革を進め、教育研究を推進すべく努力しています。そして、今年の大きな目標としては、新学部となる海洋資源環境学部(仮称)設置の認可を受けることです。
現在「国際競争力強化のための海洋産業人材育成組織の構築」を進める大学改革を実施しています。ここで重要なのは、しっかりとした将来展望を持つことです。そこで、第4期(2027年度)終了時に向けた「ビジョン2027」を作成し、教職員と共有すること、を掲げました。「ビジョン2027」については、HPに挙げていますが、理念と目標、教育、研究、社会・地域連携、国際化、業務運営、財務内容に分け、記載するとともに、アクションプランとロードマップを作成しました。ここに、ビジョン2027を掲載します。また、同時に英語版も作成し、HPに掲載しています。アクションプランも掲載していますが、ロードマップについては、毎年見直しを図りながら、進捗状況を確認し、PDCAサイクルを回して行く予定ですので、現在のところ公開はしていません。
ビジョン2027
-海洋の未来を拓くために-
東京海洋大学長
竹 内 俊 郎
はじめに
東京海洋大学は2003年10月、東京商船大学と東京水産大学が統合して誕生した、海洋・海事・水産分野の教育・研究を担うわが国唯一の海洋系総合大学である。両大学の前身は、ともに100年を超える長い歴史を持ち、本学はその伝統と個性・特徴を継承するとともに、時代の要請に応えて、新たな教育研究分野への展開を図り、有為な人材を世に送り出してきた。今般、統合により海洋に関する総合的な「科学と技術(Science and Technology)」の大学として生まれ変わった。
我が国の海洋基本法は、「海洋の平和的かつ積極的な開発・利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋国家の実現を目指す」としている。今日、アジア・太平洋地域においては法に基づく海洋秩序の確立が求められ、また東日本大震災を踏まえたエネルギー戦略の見直しの過程で、海洋エネルギー・鉱物資源開発等への期待が高まっている。このような中で本学は、海洋国家としての日本にとって益々重要となる海洋に関する学術諸分野の教育・研究の拠点となり、その水準と独創性を持って国内外で高い評価を受ける大学へと進化発展し、明日の海洋分野を担い新たな産業を創造する人材を育成しなければならない。海洋の未来を拓くトップランナーとしてその実現を図るため、中長期的な方向性の共有を目指した「ビジョン2027-海洋の未来を拓くために-」を策定したものである。
教 育
国際的な基準を満たす質の高い教育を保証するカリキュラムを組み立て、海洋分野で世界をリードする独創的な教育プログラムの構築を図るとともに、国内外の海洋関連機関との連携を行いながら、世界最高水準の教育を実施し、産官学のリーダーを輩出する。
研 究
科学技術の未来像を海洋分野で具現化する中心を担いつつ、海洋・海事・水産各分野におけるトップクラスの研究および産業界と緊密に連携した実学重視の研究を行う。
国際化
海事・水産分野が我が国の近代化過程において最先端の国際性を有してきた伝統に立脚し、グローバル時代にふさわしい国際性豊かなキャンパスを創造する。
社会・地域連携
本学における教育・研究の成果をもって、我が国および世界の地域社会や海洋関連産業界との連携を強化し、諸課題の解決や産業振興に貢献する。
管理・運営
学長のリーダーシップの下、効率的・合理的な管理・運営が行われるユニバーシティ・ガバナンスを実現する。また、多様な外部研究資金はもちろん、新しい時代の国立大学法人にふさわしい多様な資金を確保し、無駄のない財務運営を通して、学生の勉学や課外活動等に十分な施設と環境を整備する。一方、教職員に対しては、教育・研究・社会貢献・管理運営に邁進できるよう、業績評価と能力評価、並びにそれらを適切に反映する給与体系を構築する。
(平成27(2015)年4月3日骨子公表)
(平成27(2015)年10月14日公表)
この方針に従って、アクションプランを作成し大学運営に当たります。
一方、大学改革の目玉は、教育組織の再編であり、具体的には、新学部の設置となります。現在の海洋科学部(海洋環境学科・海洋生物資源学科・食品生産科学科・海洋政策文化学科)の4学科体制から、海洋生命科学部(仮称)(海洋生物資源学科・食品生産科学科・海洋政策文化学科)の3学科体制に、海洋工学部(海事システム工学科・海洋電子機械工学科・海洋情報工学科)は変更なし(教員の一部は移動)とし、新たに、海洋資源環境学部(海洋環境科学科・海洋資源エネルギー学科)の2学科(仮称)を作ります。新学部には新たに定員を12名配し、外国人教員や実務家教員なども採用する予定です。現在5名がすでに内定しています。これらの教員の特徴はすべて年俸制とした点です。また、一部の定員を利用して、混合給与(クロスアポイントメント)制度を導入する予定です。これは、教員が2つの機関に所属し、給与の額をエフォート率により、両機関が出し合う方式です。この方法は、特に外国で職を得ている研究者に有効だと思っています。このように、給与体系を多様化し、教員の多様性と流動性を確保する予定です。
また、教員の雇用方法も大きく変更します。これまでは教授会(学系)が主体となり、教員を公募し、投票ののち、採用する方式でしたが、今後は教員配置戦略会議を設置しそこで決定します。教員配置戦略会議では、教員組織からの要望を受けて人員の配置方針と配分案等を審議し、学長である議長に提示します。その後、学長はそれらの案等について決定することになります。教員配置戦略会議には、本学教員のみならず、外部からの委員(企業等)にもご参加いただき、今後の教員の配置の在り方などについてご助言をいただくことになっています。この結果、全学一元化した形で人事ポストの管理が可能になり、学長のリーダーシップが発揮しやすくなると考えています。
以前にもご紹介しましたが、国からの運営費交付金の減額に伴い、学生支援に対する経費や留学生や外国人研究者に対する国際交流活動経費、さらには学術資料の収集などに関する経費が不足しております。たとえば、これまで留学生に対して、夏には京都一泊旅行、冬にはスキー旅行、またお金に余裕があるときは相撲観戦などにも連れていくことができましたが、現在では夏の京都一泊旅行のみの実施しかできなくなりました。このように、諸経費がひっ迫していることをぜひご理解いただき、「東京海洋大学基金」へのご寄付をお願いいたします。下記にお問い合わせいただければ幸いです。
電話:03-5463-8477
E-mail: kikin@o.kaiyodai.ac.jp
何卒よろしくお願いいたします。
このほか、グローバル化の促進のために海外探検隊のさらなる活性化や東南アジア以外への派遣、三陸を中心とした人材育成事業(URA)の推進、報道関係者との懇談会の開始などについて説明を、と思っていましたが、紙面の都合上次の機会とさせていただきます。今年はさらなる事業の推進や活性化を図るべく努力してまいります。
このように、大学は大きく変容しています。しかしながら本学は、これまでの伝統を継続し、国・地方公共団体や産業界への人材養成に力を入れていくことは変わりありません。引き続き、世界を見据え、世界に通用する人材養成を積極的に進めます。会員の皆様方から温かい目でのご意見ご批判等をいただくことで、本学のさらなる発展に役立たせたいと存じます。新年にあたり、本学の状況と今後の抱負などを述べさせていただきました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。