TOEICについてーその11 私の英語学習史
神崎正哉(38海工)
今回は、私の英語学習の軌跡をご紹介いたします。みなさんの英語学習のヒントとなれば嬉しいです。
●中学高校時代
中学と高校では英語は苦手科目でした。でも、高校の時、ビートルズを聴き始めて、英語に興味が湧きました。ビートルズが好きだったので、いつも曲に合わせて一緒に歌っていました。今考えるとそれが英語のリスニングの良い練習になったと思います。
●大学時代
東京水産大学に入学してから、NHKラジオの英語番組を使った学習を真剣にやり始めました。「英語ができるようになりたい」という思いがあったからです。当時、大杉正明先生が担当していた「英会話」という番組を毎日、聴いていました。番組の中で大杉先生が自分の英語学習について語ることがあり、学生時代、大杉先生自身もNHKラジオの「英会話」を聴いていたということを話してくださいました。彼はいつも番組をカセットテープに録音して、何回も繰り返し聴いて、会話を暗記していたそうなので、私もその方法を取り入れました。会話を何回も繰り返して声に出して丸ごと覚えてしまうという練習は、私の英語力の基礎を固めるのに役立ったと思います。
●米軍のホテルで働く
ラジオの英会話番組で英語を学んでいた当時、覚えた英語を使う機会は、ほとんどありませんでした。そんな時、大学の友人がニュー・サンノー・ホテルという米軍が運営するホテルでアルバイトを始めました。米軍のIDカードがないと利用できない特殊なホテルで、話を聞いて面白そうだったので、その友人に紹介してもらい、そのホテルのレストランでウエーターの仕事を始めました。Would you like something to drink?(何かお飲み物はいかがですか)やMay I take your order now?(ご注文をお取しましょうか)などのレストランでよく使う決まり文句を覚えて、仕事に臨みました。英語を使って、実際にコミュニケーションを取る初めての経験だったので、決まり文句を使ったやり取りであっても、自分が英語で言ったことが相手に通じた時は、とても嬉しかったことを今でもよく覚えています。
それと同時に言いたいことが上手く言えないフラストレーションも味わいました。ラジオの英会話番組で覚えた英語の表現は頭の中に入っているのですが、必要な時にすんなり出てきません。英語を使えるようになるためには、覚えるだけでは不十分で、覚えた英語を実際に使わないといけないということを学びました。
●ロンドンへ
大学時代、イギリスに対する憧れが強くなり、大学を卒業したら、ロンドンへ行って暮らしたいと思うようになりました。大学卒業後、飲食店で働いて留学資金を貯め、24歳の時に渡英し、ロンドンで英語学校に通いました。初めの予定では、1年で帰ってくるつもりでしたが、行ってみるとそれでは短すぎたので、滞在を延長しました。ロンドンには、日本レストランがたくさんあり、そこでアルバイトをすれば生活は何とかなりました。学生ビザを1年単位で更新し、結局6年イギリスで暮らしました。その間、午前中は英語学校で授業を受け、午後は図書室で宿題等をこなし、夕方から日本レストランで働くという生活をしていました。英語学校は楽しく、宿題も真面目にやっていたので、この6年間で英語力が大きく伸びました。
当時のイギリスの英語学校は、ケンブリッジ英検を目指すコースが主流でした(おそらく今は、IELTSを目指すコースも増えていると思います)。私もケンブリッジ英検のFirst Certificate (FCE)、Advanced (CAE)、Proficiency (CPE)などの試験を受けました。ケンブリッジ英検はリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングのスキルを測る4技能型の試験です。私はケンブリッジ英検用のコースを受けるまで、まとまった長さのエッセイを書いたことがなかったので、特にライティングで苦労しました。毎週、エッセイの宿題が出て、本当は1時間くらいで書くべきところをいつも5、6時間かけていました。でもそのおかげでライティング力が付きました。ケンブリッジ英検を目指すコースを受講していなかったらライティングの練習はしなかったので、今の私のライティング力はケンブリッジ英検のおかげだと言っても過言ではありません。
●帰国後
6年間ロンドンで過ごした後、1997年に日本に帰ってきました。30歳になる少し前です。それから仕事を探すのに苦労しました。いろいろな会社に履歴書を送ったのですが、採用してくれるところはありませんでした。その後、紆余曲折あり、英会話学校で教えるようになりました。ちょうどそのころ、TOEICブームになり、仕事でTOEICに関わるように、TOEICの学習書の執筆の仕事も入るようになりました。また、英語学校を介して、大学に派遣されてTOEICコースを教えることもありました。大学でTOEICを教えられたらいいなあと思うようになり、大学で教えるためには、修士の学位が必要ということだったので、テンプル大学というアメリカの大学の日本校に通い、英語教授法で修士の学位を取りました。その後、専門学校や大学で非常勤講師として働き始め、2011年に神田外語大学で常勤の職に就き、現在に至ります。2014年からは、東京海洋大学海洋科学部でも非常勤講師としてTOEICクラスを教えています。
私の連載は今月で終わりです。一年間、お付き合いいただき、ありがとうございました。