食を考える!
増田 裕(28食工)
日本を筆頭に世界中の人々が長寿傾向にありますが、健康寿命はその限りではありません。私は、健康寿命を伸ばすことが個人、家族の幸せに繋がり強いては医療費削減にも繋がると考えます。
健康寿命を伸ばすには7つの要因が不可欠です。その7つとは良い食事を摂取することを筆頭に適度な運動、良好な睡眠、ストレスレス、呼吸、体温、それにもう一つやりがい、生きがいです。
私はこの7つを「長寿のための数珠繋がりの七つの輪」と呼んでいます。
昔からの言い伝え、ことわざ、伝承を真摯に受け入れ、現代の医学、科学、病理学、疫学、栄養学、調理学を組み入れ複合的見地から食の分野において「食と健康」についてお話をさせて頂きます。
昔からの教えで、「いただきます、よく噛んで、旬のものを、地のものを、腹八分目で、最後にご馳走様でした」が我が国の作法です。
現代の医学、病理学、栄養学の視点からしても合致しているのではないでしょうか。
ただ現代では更に、いつの時間帯に何をどんな順番で食べると身体に良いなどといろいろ解明されてきています。
車に例えれば、以前は燃料効率が良いガソリンの技術革新が研究されていましたが、現代はハイブリッド、電気、水素自動車技術に変わりつつあります。
車におけるガソリンは、人においては食事です。
その食事をいただく際には4つの着目点があります。
①食材が安全で安心なものか
②美味しくいただくには下ごしらえ、調理法は
③美味しさの判断とは
④感謝の気持ち
先ずは食の安全性について
農薬、抗生物質、ホルモン剤、防カビ剤、遺伝子組み換えなど体に良くないと分かっていても知らず知らずのうちに口に入れてしまっています。なんとかして上記物質を排除できる食品を作りあげなければなりません。
農薬を使わない野菜であれば、安心して外葉まで食べられます。外葉には抗酸化物質であるファイトケミカルが最も含まれており、摂取することにより身体にはプラスで、尚且つ捨てていた外葉を食べることで廃棄率も低減し、自給率は上がります。良いことづくめですね。
二番目に美味しくいただく下ごしらえ、調理法です。
日本が世界に誇れる食文化の一つが出汁です。昆布を水に浸漬させそれを65℃〜70℃以下の温度で旨味を引き出し、昆布を取り出し、その汁に鰹節を入れ100℃で煮出す。場合によっては干し椎茸の戻し汁を入れて整える。グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸が重なることによる旨味の三重奏です。
世界では、骨も香味野菜も一緒に入れて何十時間も大鍋でぐつぐつ煮出してスープを取ります。
日本は一次加工した乾燥昆布、鰹節、干し椎茸をうまく活用しスピーディに最高な旨味を引き出します。正に世界に誇れるインスタントスープです。
三番目に食の美味しさは、口で味わう美味しさ、目で分かる「愛でる」美味しさ、身体によいと頭で判断する美味しさがあります。
私はこの3つの美味しさを「美味しさの三角形」と呼んでいます。
口に入れての味、食感、香り、喉越し等の美味しさは当然ですが、器と料理の調和は日本の食文化の特長です。
道元禅師が中国から持ち帰った精進料理を一期一会の精神から創り上げた新日本型精進料理、それを優雅に築き上げた茶懐石料理には日本のおもてなしの心そのものです。正に愛でる美味しさの世界そのものです。
美味しさの3つ目に頭で食べる美味しさがあると私は考えています。
〇〇を食べると長生きできるとか、〇〇を食べると血液の流れが良くなるとか、〇〇を食べるとまさしく頭が良くなるとか、近頃は脳みそで理解してから食べている人も増えています。
因みに魚に含まれているEPA,DHA,DPAはアルツハイマー症、血流、頭にも関係があるようです。
是非とも毎日お魚をご笑味あれ。
最後になりますが、食事をいただく時の感謝の念です。
昨年スリランカに2度渡航し、その際気付いたことがあります。
西洋の食事はフォークで食材を刺してナイフで切って食べる、日本では箸で食べる、インドスリランカでは右手で食べます。
食べ物をいただくありがたさの脳への伝わり方がまったく違っていました。
それでは、ごちそうさまでした。
(フード・イノベーション研究会 代表)