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2019.01.03 16:14

2019年新春に際してのご挨拶

学 長 竹内俊郎(21製大)

楽水会会員の皆様方へ       

 会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。元号が変わる新しい年、皆様素晴らしい新年をお迎えのことと存じます。2019年新春に際し、一言ご挨拶申し上げます。

今年は亥年で、イノシシ、あるいはブタを意味し、その性格から猪突猛進の年とも言われています。私もしっかりと先を見据えて、迅速に物事に対応できるよう大学運営の舵取りを行っていきたいと思っています。

 昨年も多くの災害が発生しました。異常気象に伴う海水温の上昇などにより、全国的な夏の猛暑、台風や梅雨前線の活発化による7月の西日本や北海道の豪雨、9月の関西国際空港をはじめとする近畿圏への被害、などがありました。また、4月の島根県西部地震、6月の大阪府北部地震、そして9月の北海道胆振東部地震と全国各地で立て続けに地震が発生し、同窓生の皆様方あるいは皆様のご家族やご親戚、職場の皆様方などが被害を受けられたのではないかと心配しております。災害による被害を受けられた方々に心よりお見舞い申し上げます。

昨年の特記事項

 本学における昨年の特記事項について、2点ほどお話しします。

まず、懸案の汐路丸の代船についてですが、文部科学省から財務省へ2019年度概算要求として挙げていただきました。今回は、青鷹丸の廃船とセットでの要求となり、汐路丸でも海洋観測等ができるように最新の海洋観測機材を搭載する要求内容になっています。本会誌が発行される頃には採択の可否がわかっていると思います。

 次に、2017年4月に新たに設置した海洋資源環境学部については、2年前に入学した第1期生が2年生になり、今年の4月から3年生となります。2年生までは、2学科(海洋環境科学科・海洋資源エネルギー学科)のカリキュラムはほぼ同じでした。ここでは、海洋資源エネルギー学科が独自で開講した実習について少し述べたいと思います。

 海洋資源エネルギー学実習(図1)は、IとIIに分かれて、それぞれ2年次及び3年次に開講することとしており、夏休みに環境資源エネルギー学科の2年生が初めて実習Iを受講しました。昨年のこの実習(3泊4日)では、水圏科学教育研究センター館山ステーション及び館山湾内支所において、海洋開発や環境調査等の現場で必要とされる基礎的な計画、解析及びそのための各種計測装置や機器の操作などを実際の海上で体験し、習得させました。

図 1. 特徴ある科目・実習(海洋資源エネルギー学実習I・II)


 具体的には、海上測位、陸上測位、音響探査、ROVによる3次元測位、小型船舶の操縦、水準測量などで、小型船舶として“ひよどり”、36号艇、和船、ピンネスを用いました。昨年の参加者は 教員10名、TA8名、参加学生50名(海洋資源エネルギー学科44名、海洋環境科学科4名、その他2名)、“ひよどり”乗組員2名、館山ステーション技術職員1名の総勢71名で、学生からは、「・講義中心から、初めての専門の実習に参加でき、新鮮な体験であった。・今後の専門の選択に有意義であった。・他の大学では体験できない実習であった。・今回の体験を今後の授業に生かしていきたい。・進路が決まらず“一応”参加した実習であったが、今後の方向性を具体的に考えることができた。・小型船舶の操縦免許を取得したいと思った。」など、前向きな発言が多く寄せられ、一安心といったところです。彼らは今年3年次になると実習IIとして神鷹丸に乗船し、4日間の日程で、相模湾などの海域において海底資源探査や海底環境調査等で使用されている観測技術の基礎を体験習得することになります。これら実習の経験は海上技術者として大変重要なスキルになると思っています。

 

 また、希望する学生に対して、静岡県の清水港に停泊しているJAMSTECの「地球」の見学を昨年、一昨年行い好評でした。

今年の4月から第1期生は3年次となり、それぞれの専門分野を学び始めます。そして、来年3月からはいよいよ就職あるいは進学の進路を決め、世の中に羽ばたく準備を開始します。特に海洋資源エネルギー学科の教育内容は新しく、就職先もこれからの業種が多くなることと思います。また、改組した大学院においては、海洋資源環境学専攻の学生が修士の学位(海洋科学)を取得して、博士後期課程への進学あるいは企業等への就職が本年4月からスタートします。ぜひ、同窓生の皆様、本学の学生、特に海洋資源環境学を学んだ学生たちが思う存分活躍できる“場”のご提供をよろしくお願いいたします。

今年の課題

〇ビジョン2027
 本学では、私が学長に就任した2015年に「ビジョン2027(海洋の未来を拓くために)」を掲げ、その年の10月にはアクションプラン及びロードマップを作成しました。現在、教育、研究、国際化、社会・地域連携、管理・運営の5つの分野をそれぞれ推進しているところです。このビジョン公表後、PDCAを回し3年が経過したことから、一部修正すべき点が出てきたこと、また、持続可能な開発目標(SDGs)の公表がなされ、これらを取り込む必要があること等により、バージョン2 (v.2) を3月までに作成する予定で準備を進めているところです。決定次第、皆様方にお示しするとともに、4月改正するアクションプランとロードマップに従い、さらに前進していく所存です。

〇グローバル人材育成事業
 
本事業は、2012年度に海洋科学部が文部科学省の「グローバル人材育成プログラム推進事業」に採択されたことからスタートしたもので、これまで200名以上の学生をシンガポール、タイ、中国香港、台湾、マレーシア、ノルウェー、中国杭州、ニュージーランド(各派遣先プログラムスタート順)に派遣してきたところです。学生の海外派遣については、海洋生命科学部・海洋資源環境学部学術奨励基金を活用させていただきながら、海外派遣キャリア演習、別名「海外探検隊」プログラムの履修を希望する両学部の学生に対して支援を行っており、同学術奨励基金につきましては、楽水会に多大なるご支援を頂戴しているところであり、この場をお借りして、改めて厚くお礼申し上げます。昨年の夏隊(第11期)では、タイ、台湾、香港、杭州、ベトナム及びシンガポールに計20名を派遣しました。この2‐3月に行われる春隊にも派遣する予定です。
 本プログラムは、2週間から1ヵ月間、現地の法人でインターンシップ及び現地の大学の研究室での体験がメインとなっています。毎回帰国後に報告会を実施し、関連企業の方々もお見えになっていただいております。本事業への文部科学省からの補助金はすでに終了していることから、事業の費用を十分に確保できない状況にあります。そこで後述しますが、大学基金のメニューの中に、グローバル教育基金プロジェクトを新たに設け、関連企業や同窓生、保護者の皆様方にご寄附をお願いしております。ぜひご協力いただければ幸いです。

〇研究
 昨年度採択されました、農林水産省食料生産地域再生のための先端技術展開事業(宮城県・水産業分野)「異常発生したウニの効率的駆除及び有効利用に関する実証研究」及び国際協力機構・科学技術振興機構の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「世界戦略魚の作出を目指したタイ原産魚介類の家魚化と養魚法の構築」がスタートし、今年で2年目となることから、本格的に事業が進み始めます。
ウニの研究では南三陸町志津川湾において、ROVを用いて海中でウニを吸引しながら採捕する新技術開発に取り組んでおり、効率的にウニを採捕できる目途がつきつつあります。そのほか、海洋工学部では、国土交通省海事局が遠隔操船型自立航行船実現プロジェクトを2017年度から進めており、本学もその一端を担っています。自動車やトラック同様、船舶についても自動操船技術の開発が急速に進められています。また、G20 でも取り上げられる予定の海ごみ、特にマイクロプラスティックについての研究は本学が一歩進んでおり、新たな事業費の取得も含め、大きく前進できるものと思っています。

〇国立大学法人法が一部改正されたことに伴う新たな事業
 次の2つの事業を推進します。
・自己収入の一部(余裕金)の運用:余裕金について従前より収益性の高い金融商品で運用することが可能となったことから、基金運用管理委員会を設置し、昨年11月から資金の運用を開始しました。この資金運用管理委員会には、楽水会から松野隆事務局長を学外委員としてご参画いただいております。これから本格的に稼働させ、少しでも受取利息が増えるよう余裕金を運用していく所存です。

・土地の有効活用プラン:国立大学においても、定期借地権が認められたことから、品川キャンパス敷地(一部)を定期借地により、有効活用を図り、学生寮(混住寮)をPFI方式により建設するために、昨年入札によりみずほ信託銀行とアドバイザリー業務契約を締結し、進めているところです。原案を作成後、文部科学省に申請し、認められれば今後建設に向けスタートし、2021年度末には竣工させたいと考えています。その後は、国内外からの企業の誘致を視野に入れたオープンラボを含む総合研究棟や国際会議ができる多目的ホールの新営などを手掛け、世界に名だたる海洋系大学としてその中心となることを見据えて、さらなる飛躍を図る計画をしています。
なお、神奈川県藤沢市にある藤が岡職員宿舎については2019年度中に売り払う予定としています。

〇大学基金
 大学基金について説明します。2011年に「東京海洋大学基金」を新たに設立し、今年で8年目を迎えます。この間、国の税制改革に伴い、2016年には経済的理由で就学を断念することがないように給付型の「就学支援事業基金」を設立し、これまで、3年間で45名の学生に支援してきたところです。また、一昨年、総務部に「基金渉外課」を新たに設けるとともに、昨年度は、楽水会及び海洋会からのご協力を得て、合計3名の学長特別補佐も任命し、体制の強化を図るとともに、積極的に基金への寄附活動を実施してきております。楽水会からは、黒岡誠一氏をご推薦いただき業務に携わっていただいております。

 これまでの募金活動の中で、寄附者の方々から、基金の趣旨には賛同するものの、基金のメニューが少なく、寄附しづらい、寄附者目線に立った多様なメニューの創設を求める声が多数寄せられたことから、「一般基金(目的指定なし)」のほかに、昨年秋より「プロジェクト基金(目的指定あり)」として、6つのプロジェクト(①大学全体、②修学支援、③グローバル教育基金、④学部・研究科等、⑤課外活動等、⑥その他)を立ち上げました。パンフレットなどもご用意しておりますので、ぜひ、【基金渉外課】電話03‐5463‐4279またはE-mail (kikin@o.kaiyodai.ac.jp)あてお問い合わせいただけると幸いです。

前述しました③グローバル教育基金のほかに、⑥その他として明治丸海事ミュージアム事業、雲鷹丸修復事業やブックハンティング事業への支援なども受け付けております。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。なお、⑤課外活動等では、部活毎の支援事業も設置できますので、OB・OGの皆様、ご希望がございましたら基金渉外課にお申し出ください。

関連して、「第1回東京海洋大学感謝の集い」を昨年10月に開催しました。その折、30万円以上のご寄附を頂いた個人・法人を対象とした銘板を新たに作成し、除幕式を実施するとともに、近況のご報告をいたしました。銘板は、品川キャンパスは管理棟1F、越中島キャンパスは1号館1Fにそれぞれ設置しています。

また、今後も毎年ご寄付いただいた方々をお招きして、大学基金の活動状況や事業等の活動報告などをお伝えする予定です。

〇その他

 ・サラダサイエンス(ケンコーマヨネーズ)寄附講座につきましては、2024年3月まで延長していただけることになり、本年4月より新体制での再スタートになる予定です。ケンコーマヨネーズ(株)様には、厚くお礼申し上げます。

最後に

 今年は、東京海洋大学として統合後16年が経過し、大学運営もだいぶ落ち着いてきたのではないかと思います。ただし、今後の18歳人口の減少に伴う学生数の減少や、さらなる大学改革などの観点から、巷では、1法人複数大学化(いわゆるアンブレラ方式)や国公私立大学統合の機運が再度高まっていることは、新聞報道などでご存知のことと存じます。本学の姿勢としては、すでに大学の名称を新しく変えて統合した大学であり、水産・海事・海洋の領域を包括した国内唯一の海洋系大学として、今後とも頑張っていく所存です。新年のご挨拶として十分ではないかもしれませんが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

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