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2023.01.05 15:36

新春のご挨拶

東京海洋大学 学長 井関 俊夫(特会)

東京海洋大学長 井関俊夫

東京海洋大学長 井関俊夫

 楽水会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます

 昨年は、楽水会創立100周年記念事業が大成功を収め、楽水会として大きな節目の年であったと拝察いたします。一方で、新型コロナウイルス感染症は依然として変異を続け、with コロナの日々が3年目に入ってしまいました。このようなすっきりとしない状況においても、活気に満ちたキャンパス維持に留意しつつ、本学の使命を果たしていきたいと思っております。今後も東京海洋大学に変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 大学を取り巻く近況について若干報告させていただきます。昨年の9月30日に「大学設置基準等の一部を改正する省令」等が公布され、10月1日から施行されました。今回の改正は、1991年の大学設置基準の大綱化で示された「多様な教育の実現」の延長線上にあり、各大学の自由な教育を実施することを後押しするものとされています。改正の要点としては、大学教育の質保証システムにおいて、「客観性の確保」、「透明性の向上」、「先導性・先進性の確保(柔軟性の向上)」および「厳格性の担保」の観点を重視しつつ、「学修者本位の教育」を実現することがあげられます。

 本学は令和3年度に大学改革支援・学位授与機構による機関別認証評価を受け、「大学評価基準を構成する27の基準をすべて満たしている」との判断をいただいたものの、教育の質保証体制の改善に関する多くの指摘を受けました。今後、学生を最重要ステークホルダーと認識し、「学修者本位の教育」の実現を目指して、積極的に本学の教育改革に取り組んでいきたいと思います。

 ところで、上述の「学修者本位の教育」という言葉が用いられるようになったのは、2018年に文部科学省中央教育審議会から出された答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」が最初であり、その意味としては、教員が学生に「何を教えたか」という教育ではなく、学生自身に「何を学び、身につけることができたか」を実感させる教育であると解釈できます。この答申に基づいて、文部科学省では国立教育政策研究所と共同で全国学生調査を実施しており、その第2回の試行実施結果が昨年の10月21日に公表されました。調査対象は学部2年生と4年生を中心とした大学生(本学の対象学生数は960人)であり、11万人を超える学生からの回答があったと報告されています。

 質問項目としては、「大学で受けた授業の状況」、「大学での経験とその有用さ」、「大学を通じて知識や能力が身についたか」等の全60問であったようです。調査結果を「学修者本位の教育」の観点から見た場合、大学側の努力が足りないことを示す回答がいくつか目につきました。例えば、「課題等の提出物に適切なコメントが付されて返却されたか」との質問に対して、否定的な回答(コメントがなかった+あまりなかった)は54%であり、「大学が学生に卒業時までに身につけることを求めている力(ディプロマ・ポリシーに示された知識・能力)を理解しているか」との質問に対して、否定的な回答(そうは思わない+あまりそうは思わない)は32%となっていました。

 また、「授業アンケート等の回答を通じて大学教育がよくなっているか」との質問に対しても59%が否定的な回答となっており、長年にわたって授業評価アンケートを行っている本学として耳の痛い結果も見られました。一方で、大学での海外留学の経験を問う項目では90%以上が「経験していない」との回答でしたが、楽水会からの支援を受けた海外探検隊等を実施している本学としては、他大学よりも恵まれた教育環境にあることを実感いたしました。

 本調査実施に関する有識者会議においては、第3回試行実施を経て、本格実施を具体化する予定で、大学・学部単位での調査結果の公表(大学・学部間で順位づけは行わない)が前提とされているようです。本学としても教育改革の取り組みを遅滞なく実施し、学修成果・教育成果の可視化による教育の質保証と積極的な説明責任を果たすことで、受験生やその父母等のみならず、社会からの信頼と支援を得られる大学になりたいと思っております。本年も楽水会会員の皆様からのご助言、ご支援を賜りましたら幸甚に存じます。

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