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2019.11.01 17:45

容器包装について

木澤 武司(13製大)

 ◆石油化学(主にプラスチック産業)の仕事を振り返って

 1965年に製造科を卒業し大手化学会社に入社しプラスチック部門に配属された。
 入社当時は合成樹脂(ペレット:粒)を拡販するため「目につくものは何でもプラスチックに置き換えよう」とし、同窓生が多く活躍している食品業界の容器や袋の市場を開拓してきた。一方、腐ることのないプラスチックが海に入ると魚介類の生態系に悪影響を及ぼすと思い、当時から海岸近くのプラスチック(と缶)のゴミ拾いを行った。海を愛する私としてプラスチック容器開発はジレンマの仕事であった。

◆流通革命に伴う容器包装の発展

 先ずは海外の視察を重ねた。巨大な米国のショッピンッグモールには驚いた。綺麗に包装された食品が棚一杯。客は買い物に車で来て店内で買ったものをカートにのせ駐車場まで。数十年前の私の家の前には個人商店の八百屋や魚や肉やありました。しかし今では姿をけし日本も大型スーパーへと変わった。 私たちも流通の変化に対応すべく食品工場での自動包装と消費者の簡便性を追求し続けた。その結果、急速にプラスチック容器包装が使用されるようになった。さらに食品の鮮度保持のため包装材料も異樹脂との組み合わせや他素材との組み合わせも進んだ。そして保温性を必要とする容器には発泡プラスチックが使用された。
 また急速な核家族化により包装の小型化が進み、包装材がさらに増え続けた。

◆増えけるプラスチックク包装の歯止めが必要となった

 再三に渡り欧米に飛んだ。米国でのゴミ分別は単にBurnable(燃えるゴミ)とUnburnable(燃えないゴミ)であった。国内では先ず3R(Reduce減らす,Reuse再利用,Recycleリサイクル)の啓蒙に重点をおいた。しかし、ドイツでは4R、すなわちプラスRefuse(プラスチックの使用を拒否する)の動きも加わっていた。 一方新しい素材開発にも努めた。燃焼カロリーを天然素材同様に抑えられないか?私の失敗の一つは外国から輸入した燃焼カロリーを減らすため無機質入り素材だった。国内で生産したところ押し出し機(フイルムやシート製造装置)内部がすぐに摩耗し、また燃焼後には無機質の山となり中止した。また分解しづらいプラスチックを自然分解できないか。紫外線分解やバクテリア分解素材も検討した。米国で私の持ち込んだ紫外線分解フイルムの上に記者が雑誌をポンと投げ「これで分解するのか?」「君の家の土地と僕の家の土地のバクテリアは違うぞ!」との話も出て結局企画を取りやめました。
 リサイクルに関しては業界としても真剣に検討してきた。リサイクルマークを包装容器に付けたらどうか?使用樹脂別に色を変えたらどうか?樹脂名を明記したらどうか?プラスチックも原油から出来ているのだから原油に戻せないか?など研究した。先ずは消費者の目につく白物(主に発砲スチロール)だけは店頭で回収しようとの動きもあったが、いずれも消費者の立場にたつと負担となり得策ではなかった。そこで私たちの当時の結論は、生ごみを焼却する際の助燃材(サーマルリサイクル)としてプラスチックゴミを利用すべきであると考えた。同時に焼却炉も高性能になりダイオキシンの問題も解決した。しかし、なぜか容リ法(容器包装リサイクル法)が成立した。国は容リ法を採用するか否かは自治体の判断にゆだねた。容リ法を採用した私の住んでいる千葉県松戸市は住民の分別の煩雑さとプラスチックの圧縮と運搬に大きな費用が松戸市として発生している。なおかつ容器の製造並びに使用している企業はリサイクルの後工程での更に大きな費用を負担することになった。しかし実態は各処理段階で大きな費用をかけたリサイクル品は最終的に燃料(高炉還元剤)として燃やされ、再生原料となったものはタダに近い価格で処分されている。

◆一般家庭ゴの処理は各自治体によりバラバラ

 今の焼却炉はプラスチックゴミを燃やせるゴミ(生ごみ)と一緒に処理できるのだ。松戸市の「和名ヶ谷クリーンセンター」ではプラスチックも燃やせるゴミと一緒に燃やし、その燃焼エネルギーで発電・売電している。燃やせるゴミの袋も紙からプラスチックへ変わった。また事業系のゴミはプラスチックゴミと燃えるゴミを一緒に処理している。(近くの小学校の校内ではプラスチックゴミと燃えるゴミを分別しているが、ゴミ収集車はそれらを一緒にまとめて持って行く)しかし、松戸市は来年度から「和名ヶ谷クリーンセンター」とは別の「旧クリーンセンター」(プラスチックは処理できず燃やせるゴミのみ3万トン処理)が閉鎖され焼却場の新増設が大幅に遅れている。そのため近隣の市に10年間1トン当たり3万円の処理を依存する。また、プラスチックゴミを燃やせるゴミと一緒に処理できる施設と出来ない施設があるため)プラスチックゴミと燃えるゴミの分別を継続しなければならないのだ。東京から松戸に引っ越してきた友人が「松戸は遅れてんだよ!」の言葉を思い出す。”自分のゴミを自分で処理できない”のだ。

 さて、松戸市は環境省の意向により容リ法に固守するのだ。私には理解できない。千葉市の友人は「松戸市は財政が豊かなんだ!」と。しかし、実態は大きな債務を抱えている。リサイクルするプラスチックの各段階で発生する環境負荷と費用は私たちが負担している。焼却能力を有する自治体(千葉市や船橋市など)は容リ法を採用せず、プラスチックゴミは燃えるゴミと一緒に焼却している。またリサイクルプラスチックの一環としての固形燃料(RDF)化している県内の自治体も焼却処理に移行することになった。国としても廃プラの輸出が出来なくなり自国内で処理をせざるを得ない状況になった。国として単にレジ袋の有料化などの小手先だけでなく、最終的には焼却(サーマルリサイクル)し、そこで発生するエネルギーで発電し売電することだと考える。国の方針も変わり、国からの指導が松戸市にきて初めてリサイクルプラスチックの分別をやめ、焼却場の新増設を早める英断が下りるのだろう。

松戸市の「和名ヶ谷クリーンセンター」と「日暮クリーンセンター」の一般ゴミ処理の流れ (なお、「旧クリーンセンター」は今年度末で閉鎖し近隣の市に処理を委託する)

 

 

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