レールのない時代を生きる若者たちへ ~“戦略的人生設計”のすすめ~
野澤 栄一(26食生)
いま時代は工業化社会から情報化社会を経て5Gなど高度な情報化技術やAIが社会基盤となる超スマート社会へと大きく変わろうとしています。 パラダイムとは「その時代に共通するものの見方、捉え方」ですが、いままさにパラダイムシフトが起きていると思います。交通渋滞の解消のための方法を例にとると、
工業化社会 → 道路を増やすこと、交通規則を整備して規制を強化する
情報化社会 → 個々の車にナビゲーションシステムを搭載しドライバー(人)が 渋滞を回避する
超スマート社会 → 個々の車の位置情報がクラウドコンピュータで処理され渋滞が発生しない運行経路で自動運転される(人が介在しない)
といったイメージになるでしょうか。 情報技術の進展に加え少子高齢化やグローバル化の進展で社会システム全体が大きく変わります。利便性は向上しますが、多くの事象が複雑に絡み合い、見えないところでデータが処理され、先行きが不透明で、雇用の減少、社会不安の増大などが懸念されています。
これから社会に出られる学生さんは、私たちが40年前に経験した就職の悩みなどとは比較にならない難しい環境に置かれていると思います。私たちのときには日本経済の高度成長は終わったとはいえ、成長は続いており楽観的な見通しが持てました。終身雇用は守られていて、いい大学を出て、いい企業に入れば老後までの人生設計が容易に描け、これに乗るために受験戦争を勝ち抜き大企業に就職した者が勝者として賞賛されました。
いわばレールが敷かれていて、このレールに乗れないこと、外れることが悩みや不安だったのですが、処遇の差はあれ、多くの組織でこのレールは存在していました。
しかしながら、情報技術やAIの発展で現在ある多くの仕事がなくなることが予想されています。
時代の変化に対応できない企業、事業は撤退を余義なくされ、その興廃のスピードは加速していきますので、就職した会社に定年まで勤めることは稀になってくると思います。
こうした社会環境に対応するために教育の面では2020年から小学校で「新学習指導要領」が全面実施され、「知識を活用する力を伸ばす」「小学3年から英語教育を始める」など教育改革が進んでいきます。
では、これからレールのない時代、親や先輩の背中を追えない時代をこれから社会に出る若者たちはどのような生き方をすればよいのでしょうか。それに対する一つの答えは、企業が長期ビジョン、中期経営計画、単年度計画をつくるように自分の人生設計図を戦略的に描き、見直しながらなすべきことを実行するということだと思います。
「戦略」とは「ビジョン」というありたい姿を、どのようにして効率的、効果的に達成するかという目標達成の道のりであり、あらすじ、すなわち、ストーリーのことをいいます。
したがって「戦略を立てる」ということは、「目標達成までのストーリーを描く」ことです。
自然に人口が増え需要が拡大する時代には、何のために何をするのかという戦略をたてなくても、目の前の事業を拡大するための人、モノ、金をいかに早く手当することで成長できました。しかし今は違います。
企業の得意分野で独自の技術で将来の需要を創出する戦略が描けなければ、成長できないどころか時代の波に押し流されて存亡の危機を迎えてしまいます。
個人に置き換えると「この人生で自分は何を成し遂げたいのか」という「ビジョン」を打ち立てて、これを実現する自己啓発目標を着実に実行することだと思います。
このときのポイントは、自分の天文(人に教えてもらわなくてもなぜが人より上手くできること、時間が経つのを忘れて取り組めること)と、時代のニーズを掛け合わせた部分に活動領域を設定することです。
これを見事にやってのけているのが大リーグで活躍している大谷翔平選手です。「大谷翔平 マンダラート」と検索してみてください。その凄さが解ります。
私たちの時代は決められたレール(生き方)に自分をはめ込んでいく生き方が主流でした。窮屈さはありましたが、漠然とした安心感は持てました。これからの時代は複雑で不透明ですが、自由に生き方を決められる時代です。それだけに自分の軸をしっかり確立しなければなりません。
私の第二の人生においては、海洋大の若者たちが、自分の天文を生かして、広く世界に貢献していく。そんなたくましい人生を歩まれるお手伝いをさせていただければと思っています。 [アヲハタ株式会社 相談役]