書籍「水大新聞にみる学生時代の風景」の紹介 昭和24年から昭和47年の話
岡 彬 (16増大)
このたび東京水産大学新聞OB会では、楽水会創立100周年に呼応して昭和24年から昭和47年に発行された水大新聞の中から主たる記事を拾い、「水大新聞にみる学生時代の風景」としてとりまとめ、本として発刊いたしました。
内容は下記の目次に記載したとおり多岐にわたっていますが、どれも懐かしく、学生の眼でみた水大史とも言えるものです。是非お手に取りご一読いただければ嬉しく思います。
昭和24年、東京水産大学は久里浜のオンボロ校舎からスタートした。その後、東京に校舎を求め、長年にわたり様々な運動が展開され、昭和29年には3,4年生が昭和32年には全学生が品川の校舎に移転することになる。途中、下丸子校舎に決まりかけたこともあった。この校舎移転問題は「校舎、東京復帰への道」として3回に分けて詳細に記載されている。
実習場めぐりでは館山(水泳実習を含む)、小湊、木更津、沼津、吉田、大泉とすべての実習場が網羅されていて、各学科でどんな実習が行われていたか、学生は何を感じていたかを知ることができる。
人物紹介には教官、学生17名が登場する。いずれも「時の人」であり、記者の眼でみた人物象が素直に描かれている。亡くなられた熊凝教授や久保教授の欄には追悼文も併記されている。
随筆では7名が取り上げられている。いずれも興味深い内容であるが、宇田道隆教授の「水産と物理学者の思い出」が特に目に付く。寺田寅彦先生を始めとする水産物理学黎明期の人々が多数登場し、日本水産学会創立の裏話なども出てきて興味は尽きない。併記されている「海洋のルネッサンス沈滞は退廃衰微に通ず」は先生の水大や学生に対する熱い思いに満ちている。
学長選挙は前編と後編の2回に分けて掲載されている。前編では松生学長の突如辞任記事にはじまり、庵原学長の就任そして急逝、大学葬の様子まで記載されている。後編の学長選挙は2度とも3名の候補者のもとに行われたが、3回の投票でも過半数の得票者がいないという、まれにみる大激戦の様子がうかがえる。
練習船では「海鷹丸の誕生と第一次南極観測」さらに「特集海鷹丸南極を行く」がメイン記事で南極での苛酷な海洋観測の状況や運航状況がよく描かれている。その他、はやぶさ丸(第五福竜丸)の経緯や保存運動の記事も興味深い。
自治会活動では予算、学生大会、商船対抗、大学祭など活動別に整理されていて、往時が懐かしく偲ばれる。最後に学内改革運動と水大闘争が3回に分けて紹介されている。何故全学ストに突入したのか?その解決は。興味のあるところである。
その他、寮生活の生々しい実態、課外実習記、新校舎の建設、教官から寄せられた記事など学生時代の風景が満載されている本である。
インクの匂いの残る刷り上がったばかりの新聞を手にした時の何とも言えない感動を半世紀を経た今でも忘れることが出来ない。水大新聞OB会のメンバーはこの思いを共有している。そして、OBひとりひとりの学生時代の記事がこの本を構成している。
(東京水産大学新聞OB会会長)
※お問合せや注文は楽水会事務局まで
E-mail rakusui@kaiyodai.ac.jp
目次
はじめに
1 受験生諸君に贈る 大学生活
2 研究室めぐり
2-1 小野研究室
2-2 研究室 教育学教室
2-3 放射線の応用化 岡田研究室
2-4 草魚の人工受精に成功す 稲葉研究室
2-5 魚卵中に新タンパクを発見 須山研究室
2-6 生きた学問の室 海洋学教室
2-7 魚を公式で表す 数学教室
2-8 朝日科学奨励賞をうけた森田良美助教授 分析化学教室
3 実習場めぐり
3-1 館山水泳実習
3-2 館山実習場
3-3 小湊実習場
3-4 木更津実習場
3-5 沼津実習場
3-6 吉田実習場
3-7 大泉実習場
4 課外実習記
4-1 カニ缶製造実習
4-2 手繰船に乗って
4-3 マグロ釣り一航記
4-4 短かった南米実習
4-5 知床定置網実習記
5 人物紹介
5-1 航路 三船敏郎とメキシコに行く/春日ルイス毅
5-2 航路 関西棋院囲碁四段/成富 豊
5-3 航路 製造学科長に就任した/岡田郁之助
5-4 航路 新図書館の館長を務める/峯村三郎
5-5 航路 海鷹丸で南氷洋へ行く/海老名謙一
5-6 航路 南極調査団長となった/熊凝武晴
5-7 航路 学生課長に就任した/久保田穣
5-8 航路 厚生課長に就任した/白鳥昌
5-9 航路 海外実習に活躍する/箕輪和彦
5-10 航路 一歩一歩前進したい/武上正典
5-11 航路 生協発起人代表となった/山口芳男
5-12 航路 学生部長となった/久保伊津男
5-13 航路 アフリカより帰った者/菊地英三郎
5-14 航路 寮委員長になった舎/田畑日出男
5-15 航路 武道同好会長/松本主計
5-16 航路 インド洋観測団長/妹尾次郎
5-17 水大所感 退職にあたり諸君に希む/杵淵政光
6 随筆
6-1 水産大学に入って/細田貞子
6-2 随筆 草枕/辺見真三
6-3 翼のない鷹 くずれゆく偶像を追って/三村孝治
6-4 旧国其命維新/宇津木保
6-5 水産と物理学者の思い出/宇田道隆
6-6 雲とオリンピック/三好寿
6-7 さかなの寝言/檜山義夫
7 教官から寄せられた記事
7-1 浅海漁業と水質/岩本康三
7-2 淡水養殖の新しい研究/稲葉伝三郎
7-3 養魚飼料の問題点/荻野珍吉
8 寮生活
8-1 寮生活
8-2 水平線 寮の事務員・名方さん
8-3 海とマグロとスタンバイ
8-4 水大に入って
9 学長選挙(前編)
10 学長選挙(後編)
11 校舎移転
11-1 校舎、東京復帰への道(前編)
11-2 校舎、東京復帰への道(中編)
11-3 校舎、東京復帰への道(後編)
12 新校舎の建築
12-1 製造学科棟
12-2 増殖学科棟
12-3 漁業学科・教養棟
12-4 水産資源研究所
12-5 本館棟
13 図書館
14 練習船
14-1 新練習船海鷹丸の誕生
14-2 海鷹丸第一次南極観測
14-3 特集 海鷹丸南極を行く【昭和40年】
14-4 青鷹丸、神鷹丸、はやぶさ丸(第五福竜丸)、雲鷹丸
15 生協の設立
15-1 準備段階
15-2 生協開店
15-3 拡充する生協活動
15-4 生協食堂
16 自治会活動
16-1 予算
16-2 学生大会
16-3 商船対抗
16-4 大学祭
16-5 学内改革運動と水大闘争(前編)
16-6 学内改革運動と水大闘争(中編)
16-7 学内改革運動と水大闘争(後編)
東京水産大学新聞OB会名簿
あとがき