柔道部についてのあれやこれや その③ー現在の東京海洋大学柔道部ー
鍵山 裕久(32漁生)
◆現在の東京海洋大学柔道部
1.火曜会の活動
現在の柔道部の活動を説明するにあたり、説明が必要な「火曜会」について簡単にご説明いたします。 私が学部、そしてその後の1年間の水産専攻科を経て卒業したのは、昭和59年(1984年)です。爾来39年間、コロナ禍の3年間を除いてほぼ毎週火曜日に、現在の東京海洋大学の柔道場(品川キャンパス)に通い続けて参りました。毎週通い続けたのは、下記の2つの理由に依ります。
①東京水産大学柔道部出身の方及び水産、食品関係等の企業で働く柔道愛好家の方が稽古する為に東京水産大学柔道場を学生課に申し出て借りて稽古をしていたため。※1
②柔道部学生への指導
東京水産大学柔道部、そして現在の東京海洋大学柔道部は、東京都体育協会の組織である港区柔道会に登録。そして港区柔道会の行う年2回の昇段審査において、「形」の審査に合格する為、学生に指導を行う。※2
※1;39年前当時、柔道部は毎週火曜日と木曜日に株式会社東洋水産柔道部との合同稽古を行っており、柔道部員は東洋水産本社の柔道場に出稽古を行っていた。このため、道場が空いていた。そこで、当道場にて毎週火曜日を東京水産大学柔道部出身の方及び水産、食品関係等の企業で働く柔道愛好家の方の稽古日と定めて稽古を行うこととし、「火曜会」と言う名称となった。
※2;元々は「柔道部学生に対して「形」の指導、及び経済的な援助は行うが、部活動の内容については学生の自主性に任せる」としていたが、次に述べる内容により、2013年頃より火曜日は学生と火曜会の合同稽古となり、「形」だけでなく柔道全般の指導を行うようになった。
現在、火曜会の稽古には多くの現役学生が参加しています。戸田裕治 先輩(24製大)、加納 大 先輩(25漁大)を始めとして、多くの柔道部OBが参加して生涯柔道の意義を伝えています。
2.柔道部維持の困難さ
現在、中学、高校は言うまでもなく、大学でも柔道部の維持は難易度を増しています。40~50年前には 東京水産大学、東京商船大学それぞれ毎年5~10人以上の学生が柔道部に入部していたのが、現在では両キャンパス併せて多い年で3~5人、少ない年はゼロの年もあります。
3.兼部の許容と問題点
上記の状況下、部員の確保のためにやむを得ず、現在の柔道部は他のクラブ活動との兼部を認めています。しかし、試合日が兼部のクラブの試合日と重なるなどの問題が出ています。「どちらのクラブを優先するのか?」、これについてはあくまで個々の学生の自主性に任せざるを得ません。実際2023年の全国国公立大学柔道優勝大会(7人制の団体戦)では、エース級の2人が他のクラブの試合に出場したために不出場となり、白帯を含む6人で戦う状況となりました。また、逆に人数制限のある試合出場に関して、ほとんど稽古に出席していなくとも強ければ出場させるのか、それとも日々稽古に出席している者を出場させるのか、嘉納治五郎先生の教えである「教育としての柔道」の面を考えると難しい問題です。現在、この件に関しては、あくまで学生の真摯な話し合いで自主的に決定しています。
4.現在の稽古状況と昔の稽古
●週間 稽古場所
火曜日 18時~21時 通常稽古 於 品川キャンパス道場
水曜日 18時~21時 通常稽古 於 越中島キャンパス道場
木曜日 18時~21時 港区柔道会、火曜会との合同稽古 於 港区立氷川武道場
金曜日 18時~21時 通常稽古 於 品川キャンパス道場
土曜日 18時~21時 港区柔道会での稽古 於 港区スポーツセンター柔道場
●合宿(年1~2回) 学外で合宿
上記の稽古内容を見ると、「おっ、そこそこ稽古量は確保できているじゃないか」となりますが、実際は、週5日5時限の授業により授業終了時間が遅くなった事、両キャンパスより参加しなければならない事、兼部の者も多い事、などの理由により、1人平均2~3回/週が平均となってしまっています。40年以上前、私が学生だった頃は「月曜から土曜日まで週6日稽古。また、月1~2回は試合、合宿は年7回、大学内で行う。」 と比較すると、あまりにも稽古量が違います。しかし、この状況は筑波大学のような教育学部で柔道を専攻している学生がいるところを除けば、どの国公立大学も似た状況にあり、そのために全国国公立大学柔道大会のレベルも、かなり落ちてきていると言わざる得ない状況です。
5.柔道部崩壊の危機
2000年代に入り、部員が減り続ける中、平成15年 (2003年)に東京水産大学と東京商船大学が統合して、東京海洋大学が誕生しました。柔道部は平成16年の7月に両校のOB会が統合し、「東京海洋大学柔道部後援会」が発足、柔道部自体も統合しました。一つの柔道部となった事で部員も増え、活動に活気も戻り、柔道部後援会メンバーも一安心。しかし、その後2010年以後、部員が再び減り始め、2012年には部員が2年連続で実質入らない(留学生1名入部はしたが、稽古にはほとんど出席しない)状況となり、稽古を週1回しか行わない状況となってしまいました。確かに部員が少ない中で稽古日を減らすのは致し方がない面もありましたが、そのような活動内容では新入部員の入部はますます困難になり、ジリ貧状態となってしまうのは必然でした。そのような中、2014年に白帯ながらやる気のある部員が3名入部してきました(2人は女子学生)。 しかし、稽古日も少なく、柔道指導も充分でなかったため、「やめたい」と言う状況となりました。この時、火曜会で一緒に稽古しておられました戸田裕治先輩より「鍵山、このままでは柔道部は無くなってしまうぞ。火曜会と合同稽古の形にして、実技指導と柔道部存続を図ろう」とのお声を頂きました。こうして学生の自主性を保ちながら部の存続と継続性維持のために監督を置き(戸田先輩になって頂き)、実技の指導を火曜会及び港区柔道会が行う、また部員の入部がない時も、火曜会、港区柔道会との合同稽古で稽古の質と量を確保すると言う現在の部の運営の形が作られてきました。幸いこの3人はしっかりと稽古を行い、男子学生が3年の時に主将となり、その時点で2年生がいなかったので女子学生1人が留年をして(本人曰く、柔道部主将がいないのでわざと留年して(笑))、主将になるという、同期より2人主将を出す珍しい状況と相成りました。現在、年によって部員獲得は未だに厳しいものの、2023年度は1年生が4人、3年生が編入生を含めて3人入部して活気を呈しています。
次回、最終回となる「柔道部についてのあれやこれや」第4回では、今回説明しました柔道部存続の危機を回避するために策定したガイドライン等について記載したいと存じます。
稽古風景(2023年11月17日)