「寄附講座の今日までの歩み」
松田寛子(海1食品45修)
楽水会のメールマガジンを執筆する機会を頂戴しましたので、本稿では、サラダサイエンス(ケンコーマヨネーズ)寄附講座の2年半の歩みを簡単に述べさせて頂きます。
本寄附講座は、ケンコーマヨネーズ株式会社、ニチモウ株式会社、株式会社ベジテック、丸紅株式会社の寄附金ご支援を得て、2013年10月1日に設立されました。教育では東京海洋大学大学院 食機能保全科学専攻の専攻分野として、並びに組織では先端科学技術研究センターの所属となっております。本寄附講座の担当教員は、特任教授と特任助教の2名とし、同日特任教授として白井隆明先生がその職に就かれました。また、特任助教である私は、一般公募を行い、3ヶ月間の公募期間の後に選出され2014年3月1日に就任致しました。学生は、食品生産科学科の卒論研究学生として毎年4名募集しております。開講からの2年半、現在の所属学生は学部生4名、大学院生8名となりました。
サラダに用いられる野菜や、近年、衆目を集める魚貝類、海藻類などのシーフードは鮮度保持が難しく、食材や調味料との組み合わせによっても品質が大きく変化します。そこで、本寄附講座は、これまでに多岐にわたるサラダの食材と調味料の栄養機能、嗜好性、安全性の向上を目指し、サラダを化学的視点からアプローチしてきました。東京海洋大学ではあるものの、着目している食材には野菜が多いため、企業の皆様や他大学の先生方に驚かれることも少なくはありません。現在は特に、ジャガイモやカボチャなどの澱粉質野菜や、ホウレンソウやレタスなどの葉野菜に関する研究を遂行してきました。
澱粉質野菜は、その主成分が澱粉であるが故に、糖質が多く太りやすいといったイメージを皆様に与えているかと思います。事実、ポテトサラダは女性には不人気だというデータがあり、少なからず前述のイメージが影響していると考えられます。しかし、これらの野菜を調理する際の加熱・冷却温度さらには添加調味料を工夫することで、“悪者”扱いされていた糖質が私たちの生体内に良い影響を与える“味方”に変わります。本寄附講座では、この味方になり得る成分量の増減に関わる調理条件を解明し、澱粉質野菜の高い機能性を導く新たな調理方法の提唱を目指しています。一方、野菜にはフィトケミカル(植物栄養素)と呼ばれる、癌や動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中などの生活習慣病の予防および改善効果を有する成分が含まれています。その代表的なフィトケミカルとして、トマトのリコピンやダイズのイソフラボンなどが挙げられますが、葉野菜由来のフィトケミカルの機能性に関しては未解明な点があります。本寄附講座ではサラダに欠かせない葉野菜の摂取の重要性を提唱するために、葉野菜由来のフィトケミカルの新規機能性の解明を目指しています。
得られた研究成果については、各専門学会で積極的に発表しております。また、私は食育活動も同時に進めており、あらゆる場での講演を通して食の重要性をお伝えしています。近い将来に楽水会の皆様に研究成果を主とした良いご報告が出来るよう、今後も精一杯努めさせて頂きます。(特任助教)
白井教授のお誕生日祝いの様子
右が執筆者