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2016.06.01 12:48

学生のグローバル化

山本 洋嗣(46育成35修)

 近年、多くの大学で教育のグローバル化が取り組まれています。東京海洋大学においても、教育の国際化を強力に推進している最中です。私の所属する研究室では、世界各国から学生を受け入れており、現在、中国、インド、インドネシア、バングラデシュ、コロンビア、トルコ、メキシコ、ブラジルの留学生が在籍しています。もちろん日本人の学生も在籍していますが、全所属学生20名のうち約半数を留学生が占めます。これだけ文化や言語が異なる学生が集まると、日常的な研究室の会話やミーティングは必然的に英語でなされます。

平成28年度がスタートして早2ヶ月が経ち、私たちの研究室でも新しい留学生、日本人学生がやってきました。毎年この時期に感じることは、日本人学生と留学生の英会話力の違いです。人前で英語を使って会話をすることが苦手な日本人学生がほとんどなのに対し、留学生は(もちろん彼らも英語が母国語ではありませんが)ぐいぐい英語で会話します。この英会話力の差は一体何処から来るのでしょうか?日本人学生と留学生の英語力そのものに差があるのかというとそうでもないように思います。例えば、英語のプレゼンテーションスライドや学会要旨を書かせてみると、英文法は日本人学生の方がよく出来ているケースも多々あります。私はこの英会話力における差は英会話に対する“照れ”の違いではないかと考えています。つまり、日本人学生は人前で間違った英語を話すことが恥ずかしいと感じるあまり、正しい英語を話すことに意識し過ぎているのです。その結果、流暢に言葉を紡げないように見えます。対して留学生には、少しくらい英文法が間違っていてもあまり気にせず、会話を途切らせないように簡単な英単語で上手に言葉を紡ぐ学生が多いように思います。

私は英会話が苦手な日本人学生には「Don’t be shy!」の精神を持つようにアドバイスしています。これは、私がアメリカでのポスドク時代に初めてボスから言われた言葉です。私自身、自分が内気だと自覚したことは渡米するまで一度もありませんでしたが、渡米当初は正しい英文法を意識するあまり、口数そのものが減り、確かに極めて物静かな日本人になっていたように思います。アメリカでは、多少間違った英語でも会話をして相手に自分の意思を伝えることが重要であること、アメリカは自己主張の国だということを学んでからは、ストレスなくアメリカでの研究生活を楽しむことができるようになりました。

この様な自分の経験を背景に、日々「Don’t be shy!」の精神を持って学生の研究指導をしている訳ですが、興味深いことに研究室に所属して数ヶ月もすれば、あれ程英会話が苦手だった多くの日本人学生が、積極的に留学生と英語で議論するまでになります。これは、彼らが正しい英語を話すことよりも(もちろん正しい英語を身につけることは重要ですが)、多少文法が間違っていても自分の意志を相手に伝えることが重要であるということに気づいた証拠だと思っています。私はそれを見て、学生の真のグローバル化には、自分の意志を相手に伝える自己表現力を磨くことが最も大切なのだと感じます。(助教)

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