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2017.04.03 15:53

海洋資源環境学部を開設しました

岡安 章夫(東京海洋大学海洋資源環境学部長)

 本学は,21世紀の重要課題であるEEZを含めた海域の総合的利活用のため,それを支える海洋産業への人材供給を目的として,2017年4月に新学部『海洋資源環境学部』を開設しました.新学部は『海洋環境科学科』と『海洋資源エネルギー学科』の2つの学科から成り,大気から海底までの海洋全体に関する総合的な海洋科学の理解をもとに,海洋環境・海洋生物の調査や研究,海洋資源の探査や利用などにおいて,実践的・国際的に活躍できる海洋スペシャリストの育成を目指しています。ここでは,その設置主旨や教育内容などについて説明します。

2007年の海洋基本法の成立や,政府による海洋基本計画の策定など,我が国における海洋の重要性がますます大きくなっています。また,総合海洋政策本部では新たな領域での海洋産業人材育成に関する議論も行われおり,海洋関連科学技術に関する教育の一層の拡充が望まれてきました。

これらの流れの中で,我が国唯一の海洋系総合大学として,本学でも海洋分野のさらなる強化の必要性が明確となり,大学改革の基礎となった2014年の「ミッションの再定義」において「国際競争力強化のための海洋産業人材の育成組織の構築」に取り組む宣言をし,具体的な教育・研究分野の増強として,既存の海洋分野の他,海底資源の利用や海洋再生可能エネルギーの開発などを挙げました。そして,これらの分野を担当する教員を募集し,海洋学等の分野で既に実績のある海洋科学部海洋環境学科の教員,また関連する学内教員を構成員として,本年4月に海洋資源環境学部を開設しました。これにあわせて学術研究院(部門)も整理し,また,学部・大学院教育の連続性も考慮し,大学院博士前期課程も再構成しています。

 海洋資源環境学部(入学定員105名)では,海洋環境の保全と海洋の資源・エネルギーの利用についての専門知識を持ってわが国の海洋利用をリードしていく人材の育成を目指します。海域の持続的利用には,様々な資源の開発・利用と共に,環境とのバランスを図る必要があります。これまでは,ともすると開発と環境の保全はそれぞれ別の分野として扱われており,技術者のバックグラウンドもそのいずれかであることが多かったと思います。しかし,総合的コストを抑制し,開発と保全を効率的に行っていくためには,事業の構想・企画段階から双方を意識した検討と調整が不可欠です。海洋資源環境学部には,『海洋環境科学科』と『海洋資源エネルギー学科』という2つの学科を設けましたが,低学年においては,共通のバックグラウンドの形成を目的として,大気から海底までの海洋全体に関する総合的な海洋科学の理解に重点を置いています。その上で,2年次以降,段階的に専門性を伸ばすこととし,海洋環境・海洋生物の調査や研究,海洋資源の探査や利用などにおいて,実践的に活躍できる人材の育成を目指しています。

  また,海洋というボーダーレスな環境で活躍していくためのベースとして,旧海洋科学部のグルーバル人材育成を発展させ,外国人教員による英語による専門科目の講義や,海外への研修・派遣も積極的に行い,グローバルに通用する人材の育成を目指します。新学部で取得可能な資格は,従前からの高等学校教諭一種免許状(理科)・(水産)や学芸員などの他,新たに,学生からの要望も多かった中学校教諭一種免許状(理科)の取得が可能となりました。

 海洋環境科学科(定員62名)では,旧海洋環境学科の教員に地学系の教員が加わり,海洋および海洋生物に関わる基礎科学(物理系,化学系,生物系,地学系)を総合的に学び,海洋環境・海洋生物の調査・解析・保全・利用のための科学と技術へ発展させることを目指します。専門科目では,水圏の様々な現象の基礎と相互のつながりを学んだ後,海洋全体を包括する基盤的な「海洋学」または多様な海洋生物と環境との相互作用に関する「海洋生物学」の一方を重点に学び,専門技術を習得します。

 海洋資源エネルギー学科(定員43名)では,旧海洋環境学科の教員,海洋工学部の教員,資源探査や再生可能エネルギー等の新教員が,環境保全を前提とした海洋・海底資源の探査・利用・開発方法について,基礎科学と工学を総合的に学び,実践的に活躍できる人材の育成を目指します。専門科目では,海洋・資源・エネルギー等の基礎を幅広く学んだ後,再生可能エネルギーや海洋・海底資源の探査・利用の「海洋開発学」または海上・海中・海底での活動を支える「応用海洋工学」の一方を重点に学び,専門技術を習得します。

 また,両学科で引き続き実験・実習には力を入れていきます。キャンパス内での実験・実習や各フィールドセンターを用いた実習のほか,練習船を用いた実習についてもより発展させ,従来と同様の「海洋学実習」などの他,例えば「海洋資源エネルギー学実習」では,昨年竣工した神鷹丸(986トン)で,海底下の地殻構造や資源探査の実習などを行うよう準備しています。

以上,簡単な解説ですが,海洋資源環境学部は,東京海洋大学における今後の海洋産業人材育成の中心として機能していくことを期待されています。

 

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