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2017.06.01 14:58

出版への道のり

長崎 一生(55海洋45修)

秀和システム 1,500円(税別)

 2016年の秋、「五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」(秀和システム、四六版、304ページ)という本を初めて出版しました。

 この本は、「魚が美味しい飲食店を見抜く具体的な方法」を切り口として、「水産物流通が実際にどうなっているのか」について書いた一般の方向けの本です。そして、本の中では、「魚の味は人が決める」ということを一貫して伝えています。

 私は、新潟の漁師の家庭に育ち、海洋大の学部を卒業後、築地市場で働きました。その後、元々行きたかった大学院に進学しました。修了後は、大手IT企業に勤めながら、「さかなの会」(http://sakana-no-kai.com/ )という魚好きの集まりを主宰し、魚のイベントを定期的に行っていました。

この活動を拡大する過程で、インターネット上のブログやSNSでの情報発信を強化したいと思っていたので、ある日、ライターの入門セミナーを受講することにしました。このセミナー終了後、講師を務めていたライターの方と名刺交換をすると、とても魚が好きな方で、私の活動に関心を持ってくださいました。

 その後、前記のライターの方が担当する雑誌の取材を受けるなど、仕事でも関わるようになりました。その傍ら、飲みに行った際に私がメニューを見ながら「この魚はやめた方がいい。この魚は美味しいから頼んだ方がいい。」と言っていると、「なんで分かるの?それ、本にしない?」という話の流れになりました。後日、言われるがまま企画書を作成すると、その企画書が出版社の目に留まり、採用されることになってしまったのです。私自身も「ゆくゆく本を出せたらなあ」とは思っていましたが、この時はまさかそうなるとは思っておらず、キョトンという感じでした。

 出版が決まってからは、働きながら平日の夜と土日を中心に2ヶ月程で原稿を書きました。担当編集者の方のアドバイスが良く、書きやすいようにしていただいたこともあり、とても楽しく執筆ができました。この後、校正を終えて出版決定から4、5ヶ月程で本が世に出ることとなりました。

 執筆の際、私は、学術論文を書いた経験から、以下の点に慣れるのに苦労しました。それをイメージで言うと、ある事象の100%が「○」で無い場合、学術論文の世界では、「90%は「○」、10%は「×」」と書くべきところです。しかし、一般書では「この事象は「○」だ!」と言い切ってしまった方が好まれ、特に見出しや書き出しではその傾向が強くなります。なぜかというと、読者の欲している情報の核心を突け、分かりやすく印象にも残り、売れるからです。一般書の場合、読者である一般の方は「細かなことはいいから、要するに大方がどうなのかを簡単に教えて欲しい」と思っている方がほとんどなので、細かい正確性はさほど重要ではないのです。

 今の時代、莫大な情報がインターネット上など至るところに溢れていますし、水産や海に関する情報に関しても少なからずそうなっていると思います。しかし、一般の方が欲している情報を分かりやすい形で届けられているのかについては見つめ直す必要があるのではないでしょうか。例えば、日本で食べられている魚は、他の食材と比較しても特に種類も多いですし、90%は「○」、10%は「×」といったことが多々です。しかし、それをそのまま「90%は「○」、10%は「×」」といったのでは、一般向けには伝わりません。頭にも残りませんし、そもそも細かすぎて関心すら抱いてもらえないのです。

 一般の方に向けては、「この事象は「○」だ!」といった言い方をして、欲している情報をピンポイントに届けてあげることが重要だと思います。こういった伝え方をしていくことが、一般の方の理解を促し、世論を動かすためにも必要ではないかと思っております。

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