メールマガジン

トップ > メールマガジン > 「水産技術史」の編集に会員の支援を
2020.03.05 18:22

「水産技術史」の編集に会員の支援を

原 武史(7増大)

 水産伝習所、水産講習所、東京水産大学および東京海洋大学の同窓生で組織する我々の楽水会は、来年2021年で創立100周年を迎えることになることは、会員の一人としてこれに勝る喜びはありません。楽水会ではこの慶事を祝賀する意味で、理事会に百周年事業委員会を設置し、その下部組織として募金委員会、式典委員会および記念誌委員会が設けられ、各種の記念事業を展開することになりましたが、記念誌委員会の委員長という重要な役職を私が引き受けることになりました。

 まず最初に着手したことは、委員会として記念誌を飾る企画として何が良いかということを検討することであり、いろいろ考えました末に、私自身は「水産技術史」を提案しましたが、理事会では反対意見もなく、この提案が採択されました。

 ここで、「水産技術史」を提案した背景について触れておきたいと思います。私は昭和30(1955)年に東京水産大学増殖学科に入学しましたが、その当時の松生義勝学長の入学式における訓示を今でも鮮明に記憶しています。その内容は「諸君はこの大学に入学するだけの学力を持っているのだから、入学した後は勉強はしなくてもよいので、ぜひ水産の技術を身に着けて卒業し、水産業界の発展に技術の面から貢献してほしい。」との趣旨の訓示であったと記憶しています。その歴史をたどれば、わが母校は明治21(1888)年に大日本水産会により水産伝習所として設立され、明治30(1897)年に農商務省所管の水産講習所となり、昭和24(1949)年に学制改革により文部省所管の東京水産大学となりました。私が入学した昭和30年には、それまでの久里浜の校舎から現在の品川の地に移転したのに伴い、増殖学科の入学試験は品川校舎で行われ、漁業および製造学科は芝浦工業大学で行われましたが、その2年後の昭和32(1957)年には久里浜から品川への全面移転が実現しました。 

 私が入学した当時は、戦後の復興期にあたり食料の確保が大きな問題であり、自分自身も食料を生産する勉強をすれば、一生の職業としても安定しているとの考えから、農業と水産業のどちらの道へ進もうかと思い悩んだ末、海の生産力の大きなことに魅力を感じてこの道に進むことを決断しました。当時の諸先生方の講義を振り返ってみても、水産学の基礎となる学問の講義よりは、どちらかというと水産業を支える技術を中心に抗議されたような記憶です。したがって、松生学長が訓示されたとおり、東京水産大学では「水産の技術」を勉強すればよいと考えるようになりました。現在は戦後の食糧の大量確保の時代から、飽食の時代へと変化しましたが、水産業においても我々が築き上げてきた水産業界からは「水産業を支える技術の時代は終わり、これからは基礎的な研究から新たな技術への転換が求められる時代になった」と感じています。

 我々の楽水会からは多くの先輩諸氏が水産業界を技術で先導してきましたが、創立百年にあたりこれまでに開発された技術と水産業界の発展を支えてきた技術を集め、記念誌の一部を飾ろうと考えたところです。

 これまで委員会等で議論を重ねてきましたが、それらの意見等を取りまとめて、次のような考え方で編集を進めることになりました。 

1、基本的な考え方

  1)水産業界の発展に貢献した技術を中心に取り上げることとし、その開発者の出身大学等は問わず
    に、技術を中心に編集することとする。

  2)水産技術の内容としては、著書、論文等によって公表されているもののほか、特許等で公開されて
    いる技術を含むものとする。

  3)水産技術を開発された方々の表記に当たっては、氏名の後に括弧書きで出身校を表示するが、楽水
    会の会員である場合については卒業年次と学科を表記する。

  4)楽水会創立から現在までの約100年間に開発された水産技術を対象とする。

  5)水産技術の開発の基礎となる研究の成果、行政的施策についても取り上げる。

  6)収録範囲としては、開校以来の漁業、製造、増(養)殖という分野別を基本として、水産海洋、海洋
    環境、水産資源、水産経済、水産土木等を含むものとする。

  7)既往の文献、資料等をできる限り発掘するとともに、多くの関係者に接触するなどして、内容の充
    実を図る。

2、収録技術の分類

  1)漁業:漁労、漁具、漁船、海洋、環境

  2)製造:利用・加工、

  3)増殖:増養殖・資源

  4)経営・経済

  5)水産教育

  6)水産工学

  7)その他

3、専門部会の設置

 理事会のもとに、百周年記念委員会が置かれ、その中に記念誌委員会が設置されているが、その作業を分担し、効率よく進めるために、分野別専門部会を設けることとしました。分野別専門部会の具体的作業内容としては、分野別あるいは項目別に挙げられてきた技術の内容について精査し、記念誌の水産技術史として取り上げる技術を選定するとともに、楽水会員の中から適格者を選択して原稿作成を依頼することです。 

4、今後の進め方

 楽水会の創立百周年が来年に迫っており、今年内には原稿を完成させるという時間的な制約もあるので、分野別あるいは項目別に収載する技術について、選定する作業は本年5月末までに終了しなければなりません。その後執筆を依頼した著者からの原稿は本年10月末を締め切りとして、年内には原稿を完成させる考えでいます。

5、楽水会員の皆さんへのお願い

 楽水会は創立以来、先輩諸氏が努力して我が国の水産技術の発展を支える知識集団として、水産業界の発展に大きく貢献してきましたが、記念誌委員会ではこれらの業績を集大成することによって、百周年記念事業を盛り上げようと考えています。

 そこで、百周年記念事業にはなるべく多くの会員の方々に直接参加してもらえるよう、会員から水産業を支えてきた水産技術に関して、分野あるいは項目別に、どのような技術が何時、誰によって開発され、水産業の発展に貢献したのかを、集約したいと考えています。楽水会の百年記念事業は会員一人ひとりが参加することによって、総力を結集した手作りの水産技術史を完成させたいとの思いを強くしています。

 会員の皆様が「これは水産業を発展させた技術である」と考えられた技術を、5月29日(金)までに楽水会事務局までお知らせください。会員の皆様から寄せられた分野別あるいは項目別技術につきましては、先に記しました専門部会において議論し、その採否を決定させていただきたいと考えています。
                                        (楽水会 理事)

TOP