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2024.01.05 14:14

新春のご挨拶

東京海洋大学長   井関  俊夫(特会)

 楽水会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。
 旧年中は本学学生のために種々のご支援を賜り、誠にありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。

東京海洋大学長 井関俊夫(特会)

 さて、東京海洋大学は昨年の10月1日に創立20周年の節目を迎えました。8月29日に来賓、教職員、学生合わせて約110名が参加し、小規模ながら和気あいあいとした記念講演会が開催されました。当日は楽水会の松本和明会長(24漁大)、海洋会の関根博会長からご挨拶を賜り、さかなクン(特会)からのビデオメッセージを上映しました。その後、庄司るり前理事(現国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所理事長)から「東京海洋大学への期待」と題して学外から見た本学の果たすべき役割と期待について、竹内俊郎前学長(21製大、現独立行政法人日本学生支援機構監事)からは「これまでの20年と今後に向けて」と題して本学の歩みとビジョンについて講演していただきました。私からは「ビジョン2040達成のために」と題して今後の取り組みについてお話させていただきました。講演会の最後には、合唱部代表と参加者全員で校歌を斉唱し、無事に終了することができました。

 ここで改めて、国立大学の統合を振り返ると、平成14年に山梨大学と山梨医科大学が統合して山梨大学、筑波大学と図書館情報大学が統合して筑波大学となったのが最初の事例です。その翌年には、本学を含めた10組の大学が統合されました。大部分の統合は、大規模の総合大学に医科大学、あるいはその他中規模の大学が統合されるという形式で、名前は大規模大学の名称が引き継がれることがほとんどでした。本学の場合は、中規模の二つの大学が統合し、新しい名前の大学として生まれ変わりました。当時このようなケースは全国初であり、非常に注目を集めました。

 近年では、法人統合(いわゆるアンブレラ方式)によって、令和2年に名古屋大学と岐阜大学が東海国立大学機構、令和4年には小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の3大学が北海道国立大学機構、奈良教育大学と奈良女子大学が奈良国立大学機構に統合されました。これらはスケールメリットを生かした機能強化と組織の合理化を図ったものであると思います。一方で、今年の10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合されて東京科学大学となることは皆さんもよくご存じのことと思います。両大学はともに指定国立大学(教育研究活動の世界的展開を期待して文部科学大臣が指定した大学)であり、医工連携の挑戦的取り組みによって国際卓越研究大学(10兆円大学ファンドの支援対象大学)を目指しています。新しい大学名を冠しての一法人一大学形式の統合ですので規模は全く違いますが、本学に次いで2例目となります。

 医工連携と言えば、昨年の11月に国立大学協会の定時総会が群馬大学で開催され、そのときに重粒子線医学センターを見学する機会を得ました。この施設には重粒子(炭素イオン)を光速の70%まで加速するためのシンクロトロン加速器(直径20m)と三つの治療室が配置されており、2010年3月から実際のがん治療に供されているそうです。治療を受ける患者数は年々増加しており、昨年度までの通算で6,142人、2022年だけで843人の治療を行ったそうです。治療にかかる費用は300万円超ということですが、保険適用範囲が拡大されているそうなので、治療を受ける患者数はさらに増えて行くと思われます。

 関係者以外立ち入り禁止の区画に入ると、SF映画に出てくるようなシンクロトロンが設置されており、医工連携の成果が壮大な「社会的インパクト」を生み出していることを実感しました。「社会的インパクト」の統一的な定義は存在しませんが、内閣府等の文書では「社会、経済、国民生活等の進歩に与える短期的・長期的な影響や効果」と表現されており、国立大学法人の第4期中期目標期間における法人評価においても導入されることになっています。

 本学では、昨年度から学長裁量経費(ミッション実現戦略経費)による新領域・中核研究創成事業を開始しており、今年度中には「海の研究戦略マネジメント機構」を発足させます。これらの取り組みにより、「社会的インパクト」創出を明確に意識した大学主導の研究活動を強力に推進します。その際、創立以来のキーワードである「水工連携」をもう一度強く意識して、「我が国唯一の海洋系大学」としての研究体制を確立することが重要であると思います。

 楽水会々員の皆様には今後も変わらぬご助言、ご支援をいただけますと幸いです。

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