品川からの便り -品川駅周辺地域の将来像-
根本雅生(31漁生)
かつての品川駅といえば、高輪口(西口)方面はホテルパシフィック(後に、複合商業施設シナガワグース)やプリンスホテル等が立ち並ぶ、学生にとっては馴染みのない場所でした。本学受験の際に宿泊され、試験会場へと向かわれた方が多くいらっしゃることと思います。また、大きな声ではいえませんが、部活動等の打ち上げの時に〇〇ホテルの製氷機のお世話になった方もいらっしゃるかもしれません。まだまだコンビニエンスストアがなかった時代ですね。
東京水産大学に通学するには、駅構内の薄暗い長い地下通路を通り、港南口(東口)改札に向かいます。古びた駅舎の改札口を出ると左手には沖電気があり、私たちは右手のパチンコ店(上階に純喫茶「ボナール」)の前を通り、大東京信用組合の脇を歩き、中日新聞本社(跡地は品川フロントビル)前の横断歩道を渡り、東洋水産本社ビルを横に見ながら御楯橋を渡って大学に通っていました。その後、コクヨ東京品川オフィスやNTTデータ品川ビル等が立ち並び、サラリーマンの街へと変貌していきました。現在では、この道筋はバス通りとなり、かつての裏道(飲食店・飲み屋街)が品川駅港南口から大学へと向かうメインストリートとなっています。また、駅前広場はかなり広くなり、新橋駅SL広場と並ぶ、ニュース番組等の街頭インタビューの場となっています。
現在、高輪口から港南口へは階上の自由通路で結ばれていますが、台風や大雨が降った際には、ホームから流れ込んだ濁水により冠水した地下通路が思い出されます。その中を終電に遅れまいと脚を高く上げて走り去る先輩方の姿が目に浮かびます。また、旧駅舎の左手にあった「常盤軒」、今ではもう注文する元気はありませんが、どんぶり飯に丸いかき揚げがのせられている「品川丼」、かけ蕎麦では満足できない小腹を満たしてくれたことも忘れられません。


近年、品川駅で乗降されたり通過された際に、様々な工事が行われている現場や仮囲いを目にされていることと思います。日々利用してきた私も将来どうなるのか気になりましたので、ここにいくつかを紹介させていただきます。
◆リニア中央新幹線の始発駅
東京都は、2040年代を目標時期として品川駅を山手線をはじめとするJR各線、リニア中央新幹線、東海道新幹線、そして羽田空港、成田空港、東京を経由した東北方面まで、日本各地や世界と人々をつなぐ、国際交流拠点として位置づけています。
リニア中央新幹線の品川駅は、既存の東海道新幹線品川駅の地下約40m(幅約60m)に大深度地下駅として建設が進められています。そして、JR品川駅の東側にリニア中央新幹線用のスペースが作られ、東西に自由通路が整備される予定となっています。
◆品川駅北口(北改札側)の改良・整備
品川駅北側コンコースの改良工事が進められています。通路幅が7mから18mに拡げられ、各JR線の地上階ホームとの間にエレベーターが設置される計画になっています。また、港南口方面への改札口、北側の線路上に計画されている北口駅前広場につながる改札口が新設されるとのことです。現在、品川駅北側には円柱の柱が立てられており、この付近の上空が北口駅前広場になる予定です。
また、品川駅北側では、広大な線路区間をまたいで港南側と高輪側を結ぶ「環状第4号線」の完成(2032年予定)が待たれています。港区港南三丁目を起点に江東区新砂三丁目までをつなぐ約29.9㎞の環状道路となります。そして、北口駅前広場から環状第4号線方面に歩行者通路が整備される計画になっています。
◆京浜急行線品川駅のホーム地平化と北品川駅高架化工事
京急品川駅のホームを高架から地上へ降ろす工事と北品川駅を高架化する工事が進められています。JR品川駅では1998年に東西自由通路が完成しましたが、京急線が高架化されていたため、その部分で通路が地上へ迂回するレイアウトになっています。今後、新たな鉄道路線が開通する計画となっており、駅周辺のさらなる発展が見込まれています。これらの開発エリアへのアクセス性の問題を解決するために、京急品川駅のホームを2面4線に拡張するとともに、駅全体を地上へ降ろす計画が立てられました。これにより、長年の懸案であった行先・種別ごとの発着ホームが分離可能となり、混雑の緩和、誤乗リスクの軽減が見込まれます。また、これにともない、駅全体は泉岳寺方面(北側)に移動するとのことです。そして、移設後の駅上部には、高層ビル4棟(品川駅街区地区)が建設される計画になっています。
品川駅を出発した京急本線は、JR線の線路上を急なS字カーブを描きながら、北品川駅に向かいます。このS字カーブの最小半径は100mで、25㎞/hというゆっくりとした速度で通り抜けているそうです。北品川駅の前後には、八ッ山通り・旧東海道などに3ヶ所の踏切があります。2012年に京急蒲田駅付近の高架化が完了した結果、都内の京急本線上に残る踏切は、この場所のみとなっており、開かずの踏切として有名です。この問題を解消するために、北品川駅については逆に高架化されることとなりました。地平となる品川駅との間の40m近くに及ぶ高低差を接続するため、北品川駅自体を新馬場方面(南側)に数十m移動させるとのことです。2020年春に着工されましたが、同時並行で進められているJR品川駅北口橋上駅舎や環状4号線の工事の過程で、地中に高輪築堤の遺構が埋没していることが判明し、発掘調査が行われました(2023年末までに終了)。そして、2024年以降ようやく架設高架橋の建設が開始されました。現在、新しい高架橋の架設に向けた組み立てが進められており、下り線の横に鋼製の白い高架橋が作られているのが、車窓や駅周辺から見ることができます(2029年度完成予定)。


◆国道15号線(第一京浜)上のデッキ整備(品川駅西口駅前広場)
現在、国道15号線の西側からJR線や京急線の品川駅にアクセスするには、地上の横断歩道が利用されています。この国道15号線の上空に国土交通省が主体となり、歩行者用のデッキが新設される予定です。この品川駅西口駅前広場ができると、歩行者の動線は大きく様変わりすることでしょう。京急線の地平化とつながるこの駅前デッキ整備により、歩行者は2階部分で品川駅の東西を行き来できるようになります。また、このデッキが完成すると、地上階には高輪口(東口)と同じようにバスやタクシーなどの乗降場が設置される予定です。
このように一部分ではありますが、品川駅を中心とした周辺のまちづくりが進められています。2025年4月に駅と街の一体開発に取り組む「高輪ゲートウェイシティ」が開業し、品川-名古屋間、さらには品川-大阪間のリニア中央新幹線の開業へと向かい、それまでに品川周辺地域が国際交流拠点として成長させる計画が着実に進まれることを、そして、その地にある東京海洋大学のさらなる発展・飛躍を期待します。最後に、安全第一ですべての工事が進んでいくことを祈念いたします。
(東京海洋大学 名誉教授)