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2023.07.03 15:07

御楯橋を渡って40年

石崎 松一郎(35食工)

 このたび、令和5年6月3日に開催された一般社団法人楽水会第12回(通算第102回)通常総会にて新理事に選任されました石崎松一郎です。任期は令和6年度までの2年となりますが、大役を仰せつかり身が引き締まる思いです。諸先輩方からみるとまだまだひよっこの部類ですが、皆様の足を引っ張らないよう努力する所存です。

 私が東京水産大学食品工学科を卒業したのは昭和62年3月で、その後大学院博士前期および後期課程に進学しました。その間1年間のアメリカ留学を経て、縁があって平成3年4月から山口県下関市にある農林水産省水産大学校の製造学科に助手として赴任いたしました。残念ながら下関には2年しか在籍しませんでしたが、平成5年4月から母校の食品生産学科に助手として出戻ってきた次第です。それから30年余り(大学時代を合わせると40年)、母校の移り変わりや品川駅周辺の移り変わりを毎日のように目にしつつ今に至っています。

 この間の楽水会との関わりですが、 平成5年に母校に着任してからすぐに楽水誌の編集委員を10年ほど担当させていただきました。当時の編集委員長は現監事の森永 勤先生(16漁大)で、羽曽部正豪先生(28増大)とともに楽水誌へ掲載する内容をあれこれと考えていたのが懐かしく思います。その関係でいくつかの都道府県楽水会に呼ばれて、母校の現状を説明する機会を与えていただき、出身学科の同期や先輩方と親交を深めることができました。また、下関在住の際は、山口県楽水会に所属し、毎年開催される県楽水会総会と親睦会に参加させていただきました。一言で言えば、私にとって楽水会は横のつながりを築くうえで絶好の場であったと考えられます。各地に出張に行くと、必ずと言ってよいほど本学卒業生にお会いする機会があります。特に印象に残っているエピソードをいくつか紹介いたします。

 大学に勤めていると、海外出張の機会に恵まれます。カナダの東海岸に位置するニューファンドランドのセント・ジョンズはタイタニック号が遭難した際最初に遭難信号を受信した街として有名ですが、そのセント・ジョンズで平成10年7月に開催された大西洋水産技術国際会議に招待され講演する機会がありました。成田空港からトランジットを繰り返して深夜便で現地に到着し、疲労困ぱい状態でホテルにチェックインするや否や部屋の電話が鳴って出てみると、私の同期で大手水産会社に就職した平原弘志君(35食工)からの電話でした。たまたまイギリス支社での仕事の帰りに提携先企業があるセント・ジョンズに寄ったところ、提携先から日本人が来ているよと言って渡された国際学会のプログラムを見て、私のことを知ったとのことでした。異国の地で突然の同期との再会は、驚きとともにまさしく世界で活躍する楽水会員を印象付ける出来事でありました。

 もう一つのエピソードは平成11年8月に日本学術振興会拠点大学交流プログラム「漁獲物の高度利用に関する食品学的研究」の一環として、母校のPRと留学生確保、さらにはインドネシアの大学の海洋系および食品系学部との連携を兼ねて約1か月インドネシアの島々を訪問している中、アンボン島のパティムラ大学に立ち寄った時のことです。パティムラ大学でのミッションを終えジャワ島に戻ろうとしたところ、宗教間紛争に遭遇し、空港が閉鎖となりジャワ島に戻れなくなってしまいました。この紛争はイスラム教徒とキリスト教徒の間で起こったマルク宗教抗争と呼ばれており、このときアンボン周辺では4000人の死者と40万人の難民が発生したことが報道されています。滞在していたホテルに戻りレストランでさてどうしたものかと途方に暮れていると、日本人らしき男性がレストランで食事をとっているのが目に留まりました。その男性が私の方に寄ってこられ、「今日は長い1日になりますよ、どうです?一杯やりませんか」と声をかけてきました。マグロの買い付けで来ているとのこと(ちなみにアンボンは良質なマグロ漁場で知られており、日本の水産企業の拠点があったことでも知られています)で、私もあれこれと事情を説明すると、実はその男性も同窓生であることがわかり、一気に意気投合してその日の夜は急遽シーバスリーガルのウイスキーのボトルで朝まで水産大の話、インドネシアの話で盛り上がり、私の一抹の不安を解消していただきました。なお、インドネシアでは宗教上ウイスキーのボトルを手に入れるのは容易ではありませんが、その男性はあそこに行けば買えるからとボーイに調達させていたのが印象に残っています。残念ながら最後までお名前と卒回を教えてはもらえず、そのことが今でも残念でなりませんが、海外に出張に行くと楽水会の同窓生が世界で活躍されていることを実感できるエピソードの一つでしょう。

 さて、長々と、私と楽水会、同窓生との関わりについて経験をもとに紹介してきましたが、理事就任にあたり、少し抱負を述べさせていただきます。世界で活躍しているのは日本人の同窓生だけではもちろんありません。母校で留学生として過ごし、母国に帰国した方々も同じく同窓生です。今後はこのような留学生として母校で学んだ同窓生との連携強化も楽水会は大いに視野に入れる必要があるのではないでしょうか。品川駅周辺が移り変わると同時に学生の気質も変化しています。卒業生の入会率の低さはそれを物語っているといえますが、大学とのつながり、楽水会の活動の認知など、まだ工夫の余地は残っているように思えます。楽水会としては、合同企業就職相談会や楽水会奨励賞の授与、学術研究奨励基金(東京水産大学100周年記念基金)の活用などこれまでも多くの活動を実施してきていますが、サークル活動にも何らかの関りがあってもよいのではないでしょうか。さらには、メールマガジンの英語化、中国語化など、海外会員、特に留学経験のある同窓生に向けた配信も今後考える必要があるかと思います。

 これらを達成するためには多くの方々のお力添えが必要であろうと思います。皆様のお知恵を拝借しながらより良い同窓会になるよう努力いたしますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。ご意見、ご提案等ございましたら、石崎(ishizak@kaiyodai.ac.jp)までご一報願います。

                                     (東京海洋大学 教授)

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